優しきトルネードが来襲した。

中日の沖縄・北谷キャンプに2日、日米通算201勝の野茂英雄氏(50)が突如現れた。

与田剛新監督(53)とはプロ入り同期で30年来の親友。先日、野茂氏から「行きます」と連絡があり、新指揮官はもろ手を挙げて歓迎した。

上下黒のジャージーに身を包んだ恰幅(かっぷく)のいい来客に、選手は顔を見合わせた。しかもただの陣中見舞いではない。前夜に会食した与田監督は「気付いたことがあれば教えてあげて」と要望。伝説の右腕は“臨時コーチ”役も担うことになった。

ブルペンでは遠慮がちに捕手側から見ていたが、終盤、鈴木博志のそばに歩み寄ると伝家の宝刀フォークの助言を授けた。フォークを習得中の2年目右腕は「すごく大きい人がこっちに歩いて来て、野茂さんだったのでびっくりした。しっかり指に挟んで投げた方がいい、など言っていただきました。身につけたいです」と感激した。

毎年臨時コーチを務める中日OBの「フォークの神様」杉下茂氏(93)とのコラボ指導も貴重な一幕になった。与田監督は「僕もいろいろ教わることがある。投手に限らず野手にも野球という1つのスポーツについて教えてほしい。今回は友人として来てくれた。彼の心意気だけです」と感謝するしかなかった。

「僕はいいですよ」と寡黙な野茂氏らしく、笑って球場を後にした。3日も来訪予定。中日はぜいたくな時間を無駄にできない。【柏原誠】