恩返しの1発を放った。楽天浅村栄斗内野手(28)が西武戦で場外2ランを含む5打数2安打2打点と大暴れ。チームの連敗を2で止めた。古巣との公式戦初戦でブーイングを受けるなど「複雑な気持ちがある」と話したが、特大の本塁打で過去との決別を告げた。ここまで全10試合で3番に座り打線の中心としてチームに大きな影響を与える主砲。楽天の顔として、西武を倒した。

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花散らしの雨ではなく、本塁打が降り注いだ。5回無死一塁、浅村は西武ニールの128キロスライダーをしばき上げると、スタンドインを確信したようにゆっくりと歩き出した。打球は左翼スタンド後方に咲く桜をめがけて場外に消えた。FA移籍後、古巣との公式戦初対戦での特大2号2ラン。貴重な中押し弾に「手応えは完璧。自分のタイミングで1球で仕留められて良かった」とうなずいた。

美しい放物線で黙らせた。第1打席、西武ファンのブーイングを浴びながら打席に向かった。試合前は10年間在籍したチームとの対戦に「育ててもらったチームなので複雑」と口にし、練習中の元チームメートにあいさつ回りに走った。辻監督からは「元気か?」と優しい言葉もかけられた。それでも「(ヤジは)覚悟の上。移籍は自分で決めたこと。チームの勝利に貢献したい。楽天のためにいいところで打ちたい」と宣言通りの1発で西武ファンを沈黙させた。

惑いながら、過去との決別をする。西武で親交が深かった熊代が5回に二塁打を放つと二塁上で軽く腰をたたいた。敵として見る元チームメートに「ずっと戦ってきた仲間。打ってほしいではないけど、それに近いものはある」と揺れる心情は隠さない。だからこそ心を鬼にして「ずっと西武でやってきて、強さは分かっている。今は西武とソフトバンクの2強と言われている。その2チームを倒さないと上にはいけない」と新天地での活躍を期す。

「しっかり楽天が勝つことだけを意識したい」。出会いと別れの混じる桜の季節に、楽天打線の幹として獅子を倒す。【島根純】

▽楽天平石監督(浅村について)「FAで来て、移籍の重圧があると思うが本人は出さない。打つ、打たない関係なく、堂々と、どっしりやってくれることがチームに影響がある」

▽楽天辛島(5回4失点と苦しみながら2勝目。同学年浅村の援護を受け)「あの2点で流れが変わったというのはある。アサ(浅村)が5回に2点取った中でピシッと流れを持ってこられたら良かった」