広島大瀬良大地投手(27)が魂の力投だ。緒方孝市監督(50)が父義雄さんが亡くなったため不在だった中日11回戦(マツダスタジアム)で9回3安打1失点の完投勝利。悲しみを胸にチームを離れた指揮官に勝利の報を届けた。自身4勝目で、チームは今季最長の9連勝。がっちりと首位をキープした。また、高信二ヘッドコーチ(52)が監督代行を務めた。

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監督不在の中、エースが魂の投球を見せた。試合前に緒方監督の父義雄さんの訃報と指揮官不在を知った。「監督が掲げられている野球をしっかりやることが僕たちができること。とにかく守り勝つ野球をと思ってマウンドに上がりました」。弔い星を誓ったマウンドで、その気持ちは投球に乗り移った。

終始、力で押した。真っすぐとカットボールが全投球数の約75%を占めた。「ボール球を振ってくれて、空振りも多かった。アツ(会沢)さんもメインで要求してくれたので、調子がいいのかなと迷うことなくいけました」。直球の精度を欠いた前回登板からきっちり修正。時折、曲がりの大きなスライダー、緩いカーブ、縦のフォークを効果的に織り交ぜた。

2回から6者連続三振を奪い、4回表の前には中日が円陣を組んだ。「早打ちしてくるのかなと思ったので、打たれるまではしっかりストライクゾーンに投げようと」。冷静な判断で球数を減らした。テンポのいい投球が守りにリズムを与え、好守連発の好循環。まさに守り勝つ野球で勝利をたぐり寄せた。

この日も赤と青がはっきりと見えていた。スタンドのファンの姿だけではない。ホームベース上にも赤と青が見える。「今年は相手の得意なコースに赤、苦手なコースに青をイメージしながら投球するようにしているんです」。対戦してきた経験とスコアラーのデータを照らし合わせながら、打者の得意不得意が視覚化できるようになった。

中日戦3試合連続完投勝利(1完封)でチームを今季初の9連勝に導いた。自身登板日に限れば6連勝。一時最大8あった借金は、貯金8。お立ち台では鈴木と西川からたっぷりの氷水をぶっかけられ「寒いっすね。でもアイシング完了です」と笑った。V字回復したチームの中心には、エースに成長した右腕がいる。【前原淳】

 

◆広島会沢 序盤からいい投球をしてくれた。全部の球種が良かったですし、テンポも良かった。

◆広島佐々岡投手コーチ 真っすぐが良かった。カットもキレキレだった。(6回に松井佑の三遊間への打球を)小窪がファインプレーしたときに(完全試合を)やると思ったんだけどね。

◆広島小窪(6回、松井佑の三遊間に抜けようという当たりを好捕)「大地がいいリズムで投げていたんで。右打者は三塁線はないと思って、ちょっと三遊間に寄っていた。あわてて投げた2バウンドを(一塁バティスタが)よく捕ってくれて助かりました」。