広島鈴木誠也外野手(24)が執念の同点二塁打で、球団月間最多タイ記録の5月18勝目を引き寄せた。2-3の5回1死一、三塁、この場面から29分間中断。ノーゲームもちらつく中、気持ちを切らなかった。再開後にバティスタが倒れて2死一、三塁。ヤクルト高橋に直球攻めを続けられ5球目、148キロの内角球。バットを折られながら左翼の芝へ。三塁走者を迎え入れ「来た球を振っていこうと思った」と振り返った。

続く西川の内野安打では送球の乱れに乗じ、勝ち越しの走者に続き二塁から一気に生還した。5点目をもぎ取り、雄たけびを上げながらガッツポーズ。「純さん(広瀬三塁コーチ)が回してくれていたので」。1回のバックスクリーンへの先制2ランだけではない。チームの勝利を考え、泥臭く走者をかえし、ひたむきに走った。

豪快なスイングの陰に繊細な感覚を備える。プレーボール直前の素振りは、素手で行った。高橋の球筋を頭に入れ、グリップの感触を感じながらタイミングを確認した。本当は、打席でも素手でバットを握りたいという。どうしても滑るため、手袋をはめる。リーグ1位の打率3割5分8厘、41打点、2位の15本塁打は、職人気質のこだわりを研ぎ澄ませた結果だ。そして、6位の8盗塁はチームプレーの証しでもある。

緒方監督は「中断のところはお互いピッチャーが難しい。誠也の一打が相手投手にショックを与えた。4番の仕事」とたたえた。記録的な快進撃を続ける赤ヘル軍団を、鈴木が引っ張っていく。【村野森】