最高や! 阪神が今季5度目のサヨナラ勝ちで不名誉記録を免れた。8回にジェフリー・マルテ内野手(27)が起死回生の5号同点2ランを放つと、12回1死満塁で代打高山俊外野手(26)が右翼ポール際に1号グランドスラム。甲子園の巨人戦10連敗の球団ワースト記録を阻止する大きな1勝。矢野阪神が巨人を抜き、2位に浮上した。

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あまりにも劇的な幕切れだった。12回裏1死満塁。代打高山が鮮やかな放物線を描いた。右翼ポール際に今季初アーチとなるグランドスラム。チームは今季5度目のサヨナラ勝ちで巨人を抜き、2位に浮上した。「自分が打ったのか、よく分からない。不思議な感じです」。ヒーローはお立ち台で興奮気味に話した。

もう1人のヒーローはマルテだった。2点を追う8回2死一塁。沢村の内寄り低め143キロ直球を軸回転でフルスイング。切れない。むしろラインの内側に戻ってきた。マルテが打ち上げた白球はまるで意思を持っているかのように、最後の最後、左翼ポール際ぎりぎり最前列席に飛び込んだ。いったんファウルゾーンに向かったようにも見えた飛球は起死回生の同点5号2ランに変身した。

「ゾーンを決めて打つことができたよ。チームのために打つことができて最高の気分だね」

フェンスによじ登った左翼手重信のグラブにはそっぽを向く、憎らしいほど虎党びいきの弾道。試合が振り出しに戻った瞬間、一塁側ベンチの矢野監督は破顔して夜空に右拳を突き上げた。

右ふくらはぎの張りで開幕から出遅れ、4月下旬に1軍昇格後も打率2割前半。右投手相手では試合前時点で打率1割6分だっただけに、右腕沢村からの1発には首脳陣もホッと胸をなで下ろしただろう。

26日の敵地DeNA戦でも2ランを記録。中2日での2戦連発でいよいよ本領発揮か。この日は来日初の猛打賞。3点を追う5回は先頭で左前打を決め、この回2得点の反撃をけん引。延長11回裏は再び先頭で左前打を放ち、無死満塁の好機に作った。一塁守備でもゴロに飛びつき、失点を防ぐ場面もあった。

調子の上がらなかった助っ人に、打撃不振から抜け出せなかった高山。2人のアーチで、巨人戦の甲子園10連敗を阻止。矢野阪神が完全に上昇気流に乗った。