苦しんでいた男がバットと足で、虎を連敗脱出に導いた。首脳陣が打線の大幅改造に乗り出したDeNA14回戦(横浜)。打撃不振で先発メンバーから外れたドラフト1位近本光司外野手(24)が、延長11回に二塁打&三進。さらに俊足を生かした本塁生還で勝利の扉をこじ開けた。チームの連敗を4で止め、DeNAと並ぶ3位に再び引き上げる原動力となった。

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悩むことなく前に出た。近本が迷わず二塁ベースを蹴った。1つでも先の塁へ-。三塁ベース到達で、ほっこり笑顔を見せた。

近本 常に先の塁を狙っている。自分のやるべきことはできたと思います。

武器の俊足、持ち味の冷静さが雨中で光ったのは延長11回だった。先頭で打席へ。2球目145キロを捉え、左中間を割った。「センターが少しもたついていたのと、カットマンの位置を確認したときに、センターがサードに投げたので行けるところまで行こうと」。中継プレーが乱れる中、果敢に三塁へ。続く糸原の犠飛で決勝のホームを踏んだ。浅い飛球だったが「藤本(三塁ベース)コーチが『行け、行け!』と言ってたので勝負しました」と振り返った。

矢野監督も絶賛する一連のプレーだった。三進した決断について、指揮官は「ちょっとポロッとしたのを三塁まで行って」と感心すると「低い当たりで浅いライナーでも(犠飛で)帰ってこれる。近本で取った1点」と激賞した。

チームは前夜まで2試合連続完封負けを食らうなど4連敗中だった。首脳陣は打線の大幅改造を決断。4月20日巨人戦から1番出場が続いていた近本は打撃不振の影響もあり、スタメンから外れた。だが、そんな苦境でも生かす冷静さが近本にはある。

近本 今の自分にとっては、その方がいいのかなと…。自分の調子もあまりよくなくて、チームにも迷惑かけていたので。(ベンチでは)また違う視点で試合が見られた。刺激があった。

前夜までチーム4連敗中、近本も17打数1安打0得点と苦しんだ。だが、やまない雨はない。自身5試合ぶりの得点はチームの大きな勝利を呼び込むものになった。さらに矢野監督は、試合後「明日、使うよ」と近本のスタメン起用を断言。やはり虎のリードオフマンは欠かせない存在。一呼吸ついた近本が、また走りだす。【真柴健】