西武秋山翔吾外野手(31)が、ソフトバンクのマジック点灯を阻止した。1点を追う5回に、16試合連続安打となる2点適時打を右前へ運び逆転。これが決勝打となった。20日に出場選手登録が9年に達し、海外フリーエージェント(FA)権の取得条件を満たした。メジャー挑戦を視野に入れる男がチームを勝利へ導き、自力V消滅の危機を救った。

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秋山シフトにも動じなかった。1点を追う5回1死満塁。秋山は初球から2球連続フルスイングした。1球目と同じ151キロの速球を右前へ運ぶ逆転2点適時打。一塁上で手をたたいた。1回の第1打席では中前へ抜けそうな当たりも、遊撃手が二塁付近に守備位置をとる“秋山シフト”に引っかかり、アウトになっていた。「相手はバッティングを変えてほしいから(シフトを)やってきたと思う。変に変えないのがよかった」と意に介さなかった。

新たな権利を得て、試合を迎えていた。この日で海外FA権を取得。今季が3年契約最終年とあって、今オフのメジャー挑戦が選択肢に加わった。「9年間、いろんな方々に支えてもらわないと出られないわけだから、協力してもらった人たちに感謝しています」と素直な気持ちを示した。

試合後、渡辺GMと面談し9年間の貢献度をねぎらわれた。同GMは「球団として誠意は見せる。恥ずかしくない数字は出す」と、好条件で慰留に努める方針を明言。ただ秋山は「個人的なことだから自分がどうこう言うことはない。全部終わったら考えるタイミングがくる」と口を閉じ、シーズンに集中する。

秋山の頭の中は、いたってシンプルだ。チームが勝つこと。その結果、首位ソフトバンクの独走阻止につながる。「去年、追われる怖さを知って、今追う立場になっている。自分たちがバテないようにしていきたい」。この試合、引き分け以下なら自力Vが消滅し、ソフトバンクにマジック24が点灯していたが、自らの殊勲打で阻止。攻防は続いていくだけに「気持ち悪い存在に僕たちがなっていかないといけない。ここから1勝にかかる重みが違ってくる」。残り31試合。首位と5・5ゲーム差。2連覇を諦める数字ではない。真っさらな気持ちで、タカの背に襲いかかるだけだ。【栗田成芳】

▽西武辻監督(海外FA権を取得した秋山について)「彼が決めることだけど、監督としては(移籍は)やめてほしい。欠かせない1番打者だから」

◆秋山翔吾(あきやま・しょうご)1988年(昭63)4月16日、神奈川県横須賀市生まれ。横浜創学館から八戸大を経て、10年ドラフト3位で西武入団。15年に216安打でシーズン最多安打記録を更新。17年首位打者、最多安打3度、ベストナイン3度、ゴールデングラブ賞5度。15年プレミア12、17年WBC日本代表。今季推定年俸2億3490万円。184センチ、85キロ。右投げ左打ち。