日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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フランス野球が進化を示した。第3回「フランス国際野球大会 吉田チャレンジ」の最終戦が1日、セナール球場で行われ、フランス代表が侍ジャパン社会人代表を7-6で下し、逆転サヨナラ勝利を収めた。

最終回のサヨナラ打は、阪神にテスト生で参加した経験をもち、日本の独立リーグでもプレーしたフレデリック・アンヴィ外野手(30)が決めたものだ。

90年から7シーズン、仏ナショナルチーム監督を務めた吉田義男氏(86=元阪神監督、日刊スポーツ客員評論家)に敬意を表して開催されてきた。今回は2カ国対抗で、日本の4勝1敗だった。

14年第1回大会でフランスは西濃運輸に勝っているが、日本代表からの白星は史上初の快挙。吉田氏は「トリビア~ン!(素晴らしい)」と声を上ずらせて「歴史に残る1勝ですな」と感激した。

日本の4勝はすべて2桁得点。フランスにとっては東京五輪につながる欧州選手権大会を前にした強化試合だが、チーム力における日仏の差は顕著だった。ただ、ソウル五輪コーチ、バルセロナ五輪監督を務めた「侍ジャパン」の山中正竹強化本部長(72=全日本野球協会会長)は、将来的展望を見据える。

「バルセロナでみたフランスとは桁違いで成長している。日本がキューバ野球を知ったのが72年、最強国を倒すまでに30年近くの歳月を要したことを考えると、いつかはそういう日がくるのかもしれない。フランスからチーム強化の要請があれば、日本は協力を惜しまない」

現在はフランス各地に230のクラブチームが存在している。1部の12チームは各6チームに分かれて対戦し、トップチーム以外に、U12、U15、U18も運営。10年前の野球人口の8000人は、1万5000人まで増加した。

欧州野球連盟ディディエ・セミネ会長は「前はシニア層が目立ったが、最近は若者との逆転現象が起きている。日本との対戦は我々の誇り。ムッシュ吉田への恩返しの意味も込めて、日仏交流を可能な限り継続したい」という。

10月アジア野球選手権(台湾)を控えてチームを率いた石井章夫監督(54)は「フランスは打撃の振りでは引けをとらない」と説明。団長の日本野球連盟・筒井崇護副会長(61)も「投手力アップに尽きる」と分析する。

野球・ソフトボールは東京五輪では実施されるが、24年パリ五輪では競技種目から除外される。吉田氏は「アマから選手が供給されるプロもあぐらをかいていてはいけない」と手厳しい。五輪復活も含めた世界的な恒久化は、野球大国の日米より欧州がキャスチングボートを握っている。

◆吉田チャレンジ成績 ▽8月28日 日本15-2フランス(ルーアン)▽同29日 日本22-0フランス(モンティニー)▽同30日 日本15-5フランス(セナール)▽同31日 日本18-8(同)▽9月1日 フランス7-6日本(同)