昌塾で藤浪再生だ! 阪神の秋季安芸キャンプで臨時コーチを務める山本昌氏(54=野球評論家)が1日、本格始動指導した。

中日で219勝を挙げ、50歳まで現役を続けた「レジェンド」は朝から夜まで藤浪晋太郎投手(25)を熱血指導。今季プロ7年目で未勝利に終わった右腕に、宝刀チェンジアップ(通称スクリュー)を伝授し、藤浪も復活への手応えをつかんだ。

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選手から拍手で出迎えられた山本氏が最初に向かったのは、藤浪だった。「山本さん、ちょっといいですか」。藤浪がアドバイスを求めたことがきっかけ。「こういう機会でしか聞けないですし、そういう話を聞きたいと思った」。阪神帽をかぶった山本氏の熱血指導が、一気に開演した。

最初のキャッチボール。山本氏はいきなり宝刀のチェンジアップを伝授した。藤浪と望月のキャッチボールを見守り、時には藤浪に自身が返球しながら、惜しみなく感覚を伝えた。「藤浪投手に関してはチェンジアップを練習することによって、手首が立ってほしいなと。私自身がそうだった。チェンジアップを覚えたことによってリリースが立って、プロ野球で勝てるピッチャーになりましたので」。リリースが縦になれば直球の安定感にもつながる。解説は明快だった。

午後も熱血指導が続いた。藤浪は60球近くを投げた後「チェンジアップ行きます!」と早速新球にチャレンジ。山本氏はうれしそうに近づいた。藤浪が投げるたび「すげえ、変化してない?」「押すんじゃなくて押し込む」「恐ろしいな、ナイスボール!」と興奮気味に声を掛けた。評論家として見たことはあったが、捕手の後ろから初めて見て、抜き出た素質を再確認した。「強烈だねえ。ちょっとびっくりしましたね。100球中80球、ああいう(いい)ボールがいけば絶対完封する。そういう確率をどんどん上げたい」。今季未勝利など近年苦しむ右腕に復活の道を示した。

この日の山本氏は高橋遙にもチェンジアップを教えるなど、参加全投手陣に声をかけ、大忙しで動き回った。そして夕方、下半身だけタテジマに着替えた山本氏が向かったのは、サブグラウンドの藤浪だった。「近い距離のキャッチボールを今、課題としてやっています」と、リリース時に手首を立てることを徹底した。藤浪は一連の指導に驚きの言葉を並べた。「今までにない、斬新というか。チェンジアップのリリースがストレートにつながるというのは、自分の中ではない考えだった」と感謝した。

前夜、芸西村の宿舎で行われた特別講義でも、藤浪は熱心にメモを取ったという。「すごくいい勉強が初日から出来ました。結構来ていただけるとのことで、チャンスだと思う。来年以降に生かしていかないといけないと思います」。熱く濃い昌塾が復活の足がかりになりそうだ。【磯綾乃】

◆近年の藤浪 新人の13年に10勝を挙げ、15年には14勝してプロ入りから3年連続2桁勝利をマーク。同年は最多奪三振のタイトルも獲得するなど、若きエースとして順調に実績を積み重ねた。だが、今季はプロ入り初の0勝に終わるなど、ここ4年間は勝ち星が激減している。特に四死球を連発するケースが多く、安定感を欠く投球が続いている。今春キャンプでもプロ入り最多の291球を投げ込んだり、実戦でスリークォーターを試すなどフォームをめぐって試行錯誤。10月のフェニックス・リーグでは、同26日のハンファ戦で4回無失点に抑えたが、9四球の大乱調だった。