阪神のOB会総会が11月30日、大阪市内のホテルで行われ、川藤幸三OB会長(70)が藤原崇起オーナー(67=電鉄本社会長)に異例の直訴だ。

今季も主力に育った若手が少なく、来日1年目のマルテも12本塁打にとどまった。助っ人獲得で失敗を繰り返す現状に危機感をにじませ「ホンマにええ外国人をとってください」と壇上でお願い。誰よりもチームを見続けた会長の熱い親心だ。

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春団治の浪花節にタイガースへの深い愛情がほとばしった。OB会懇親会のあいさつで、壇上の川藤OB会長は目の前にいた藤原オーナーに思いを訴えた。

「オーナーにお願いしたいのはホンマにええ外国人をとってください。もう、役に立たん外国人はいりません。日本人の柱ができるまでなんとか矢野監督に力を貸してやってください」

今季の公式戦は遠征先にも足を運んで、試合前練習もベンチから見続けた。現状を的確に把握するからこそ異例の直言だ。藤原オーナーも「我々も、矢野監督とともにフロントと一体となって難問題に取り組んでいきたい。長所、欠点、フロントももちろん、チームもチェックできていると思う」と深くうなずいた。

今季3位に滑り込んだチームにとって、投打とも助っ人補強が喫緊の課題だ。538得点は12球団最少。94本塁打もリーグ5位だった。来日1年目のマルテは故障で出遅れ、打率2割8分4厘ながら12本塁打にとどまり長打力を発揮できなかった。オフはメジャー通算92本塁打のジャスティン・ボア内野手(31=エンゼルスFA)と基本合意し、4番候補に見込む。さらに右打ちの大砲獲得を狙う。

12球団最強の投手陣も長年の大黒柱だったメッセンジャーが現役引退。救援陣でフル稼働したジョンソンとドリスは保留者名簿から外れ、来季残留が危機的な状況だ。他球団の戦力構想を外れた助っ人投手の獲得も視野に入れ、対応策を練っている。川藤OB会長はこの日の総会で来季続投が決定。就任10年目に入る。チーム愛は強く、人一倍の危機感を募らせる。

「エースと4番は日本人で生え抜きが理想やけど時間がかかる。ここ数年を見てもそう。その間、外国人が大切。オーナーの仕事」

特に野手はミスマッチな非力助っ人を獲得しては失敗する悪循環を断てない。フロントの急所を突く、名物会長の直訴だった。チームは05年を最後に優勝から遠ざかる。常勝軍団に変貌させるべく、トップに物申さずにはいられなかった。

○…懇親会に先だって行われたOB総会では、昨年から今年にかけて亡くなったOBをしのんだ。阪神で通算100勝をあげた名投手ジーン・バッキー氏、村山、小山とバッテリーを組んだ捕手の山本哲也氏、内野手の小玉明利氏、バックハンドトスの名人鎌田実氏、投手の山尾孝雄氏の5人をしのんで、黙とうがささげられた。

◆阪神OB会主な出席者 吉田義男、安藤統男、小山正明、本間勝、江夏豊、掛布雅之、真弓明信、木戸克彦、平田勝男、和田豊、藪恵壹、桧山進次郎、井川慶、加藤康介(順不同、敬称略)。フロントOBら、約110人が出席。