来季の覇権奪回を目指す日本ハムは、1軍首脳陣に新たな顔ぶれが加わる。「新任コーチに聞く」と題し、3回連載で紹介する。

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一層の情熱をまとい、帰ってきた。日本ハム矢野謙次外野守備コーチ兼打撃コーチ補佐(39)は「毎日、楽しくてしょうがない」と声を弾ませた。18年に現役引退後、チーム統轄本部の特命コーチとして海を渡った。球団が提携するレンジャーズへコーチ留学。現役時代の代名詞「気合の戦士」の闘志は、土俵を変えても燃え続けている。

日米で感じた違いは「心から野球を楽しんでいること」。ノックを受ける選手がミスをしても、誰もとがめない。選手はミスと思わず、後ろに散らばるボールを拾いに行くことはないという。「ミスを全然恐れないから、思いきりの良さがすごい。見逃し三振しようが、平気な顔して帰ってくるんだよ」。文化の違いはあるが新鮮であり、根底にある「楽しむこと」を、まざまざと感じた。

メジャーリーガーの卵と一緒になって学んだ。「聞かれたら教えるけど、私から何かを教えたりすることは、一切なかった」。球場では英語、スペイン語などが飛び交い、気になった言葉はメモに取った。宿舎に戻ると清書。帰国した際に通っていた英語教室で“答え合わせ”を楽しんだ。「毎回(米国へ)行くたびに、私もレベルアップして行く」と交流は深まり、現在もレンジャーズ関係者と連絡を取り合っている。

意識の変革を訴えていく。帰国後、最初に指導にあたった秋季キャンプで痛感した。「ミスや注意されることを、恥ずかしいと思う選手が多い」。米国で見た選手と正反対で、成長を邪魔する感情だと危惧する。16年間の現役時代、主に代打が主戦場だった矢野は痛感している。「私はいろいろ、気付くのが遅かった。彼らには太く長くやってほしいから、早く本物を知ってほしい。本当の練習を知って欲しいし、本当の本気って何か気付いて欲しい」と願う。

だから最大限の熱意を持って、選手に接していく。理想は監督、コーチが必要のないチーム。選手同士で声を掛け合い、アイコンタクトでエンドランのサインを出す。楽しむ選手に、観客の心が躍る野球を目指す。「チームの勝ち負けはもちろんそうだけど、選手がいかにうまくなって人間がデカくなって、より魅力的な選手にすることが私がやること。魅力ある選手がいれば、勝手に勝つよ」。

来季を前に、気持ちは高ぶっている。絶えることのない熱い思いは、チームに注がれていく。【田中彩友美】(おわり)