最大の補強はタナ! 遊軍の佐井陽介記者が25日、打ち上げ目前の広島沖縄キャンプに「潜入」した。三塁候補の新外国人ホセ・ピレラ外野手(30=フィリーズ)以上に目立っていたのが、昨夏右膝を手術した田中広輔内野手(30)だ。矢野阪神は昨季、5年ぶりに広島に勝ち越したが、復活の「タナキク」に要警戒だ。

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田中広は気持ち良さそうに走塁練習を続けていた。昨年8月に右膝を手術。動きの制限は「ない」と言う。「元気でしょ?」。日焼けした笑顔から、確固たる自信が見え隠れした。日南、沖縄キャンプでは実戦全9試合に1番遊撃で先発し、計19打数6安打の打率3割1分6厘。走塁面ではけん制悪送球に一瞬の遅れもなくスタートし、とっさの帰塁でも俊敏な切り返しを見せている。

昨季は97試合出場にとどまり、打撃3部門で自己ワーストの数字。2番菊池涼との「タナキク」も解体されたが、絶不調の原因は明白だった。「100%の半分もいかないぐらいの状態。本当に走れないし、打てなかったので…」。右膝の激痛が消えた20年、「タナ」が再び虎の脅威になることは間違いなさそうだ。

「自分の場合、1回の打席で10球投げさせれば三振してもOKな部分もある。打ったって、しょせん3割。自分の気持ちいいバッティングをしたって…という思いは常にありますね」

「汚れ役」を買って出られる存在が1人いるといないとでは大きく違う。戦線離脱した昨季終盤はルーキー小園に遊撃の座を明け渡したが、キャンプ中の起用法を見る限り、再び1番田中広、2番菊池を基本線として開幕を迎える情勢だ。

広島は昨季リーグ4連覇を逃した。「(自分が何もできない)歯がゆさがありました」。選手会長1年目の田中広はもう1度全力で仲間のために身を粉にする覚悟でいる。「理想はノーヒットで1点を取ること。四球で出て盗塁して、進塁打から犠飛が出て。それがタイムリーなら一番ですけどね」。憎らしいほどにあっさり得点を奪い取る1番田中広が、あの「タナキク」が、帰ってくる。虎投手陣は警戒度マックスでカープ打線と相まみえる必要がありそうだ。【佐井陽介】