#開幕を待つファンへ 「カーブ」を掘る。原点ともいえる変化球が今、メジャーのトレンドとなった「フライボール革命」に対抗する球種として注目されている。メジャーでは持ち球とする投手が見受けられるが、現在の国内プロ野球では駆使する投手は意外と少ない。握りと感覚、極意。奥の深~い球種の使い手に聞いた。【前原淳、久保賢吾、桑原幹久】

◆楽天牧田和久(35=右下手投げ)

球界屈指のサブマリンは、異競技からインスピレーションを得た。プロ入り後、同投法の元ロッテ渡辺俊介氏がカーブを雑誌で解説していた記事を目にし、参考にした。縫い目に人さし指、中指をかけるシンプルな握り。「理論的に言えば回転をかければいいので、サッカーボールを蹴り上げるように、下からこすりあげる感じ。ゴルフのロブショット、バスケットボールのレイアップシュートと同じです」と独特の表現で感覚を明かした。

地面すれすれから浮き上がり、沈む。80キロ台後半から90キロ台のカーブは配球における「ティータイム。つかの間の休日みたいな感じ」。出合い頭の1発を浴びるリスク軽減にもつながる。「打者は基本的に直球を待っていると思う。真っすぐはガツンと打てるけど、その中で遅く甘い球が来たら『きた!』と思う分、ミスショットの確率も高くなると思う」。150キロ超えが当たり前の中、遅球の存在感を示している。

◆楽天岸孝之(35=右上手投げ)

名投手からイメージをふくらませた。小学生の頃に元巨人・桑田真澄氏の縦に大きく割れるカーブに憧れた。「当時はカーブ、スライダー、フォークくらいしかなかったですよ(笑い)」。中学時代に試行錯誤して確立した握りは今でも変わらず「縦に抜く感覚。腕の振りは真っすぐと一緒です」。桑田氏のように大きな弧を描くカウント球とは違い、低めに決め球として活用する際は軌道のふくらみを小さくする。「僕は球種が少ないので大事な球。投げることに勇気がいるボールではないです」と絶対的な自信を持って投げ込んでいる。

◆広島大瀬良大地(28=右上手投げ)

中学時代に野球本に掲載されていた、当時東海大の久保(現楽天)の握りをまねて投げ始めた。「不器用」と自認する右腕はプロ入り後も、カーブが得意な投手の動画を見て習得を目指したが、思うように操れないという。「本当はふわっとした(楽天)岸さんのような軌道のカーブを投げたいんですが、抜くような球種があまり得意ではない。だから軌道にはこだわらず、真っすぐ系とのアクセントになればと。緩急をつける球種と割り切るようにしました」。今では決め球ではなく、力強い真っすぐと切れ味鋭いカットボールの引き立て役として有効に使っている。

◆巨人桜井俊貴(26=右上手投げ)

多種多様な使い分けをする。軟式の中学時代に遊びの延長で投げ始め、試行錯誤の末に現在の形が完成。「三振を取りたいときは速いカーブとか、いろんな使い方ができます」と球速、曲げ方を変え、勝負球でもカウント球でも活用する。「軌道のイメージは縦。(投げる前に)先に手首をひねって、押し込みながら投げる感じです」と独特の感性を披露した。

◆巨人田原誠次(30=右横手投げ)

社会人時代に武器になる変化球を求めて習得した。「勇気のいる球なんで正直怖いが、武器でもある。せっぱ詰まった時ほど威力を発揮すると思う」。横手投げ右腕が一番意識することは「抜くこと。腕を振ってボールが抜けてくる。イメージとしては後ろに投げる」と独自の感覚を説明。その日のコンディションにより、握りに変化を加えて調整する。

◆巨人高木京介(30=左上手投げ)

小学4年生頃、当時所属したリトルリーグの監督から教わった。投げ方は少しずつ変化したが、握りは当時から変わらない。「イメージは中指と薬指で挟んで抜く。最後に人さし指で回転をかける」。使いどころとしては打者が速球系を待っている際に投げることが多い。「追い込むと変化球を待ってくる。初球とかにストライクを取るイメージです」と説明した。