1球ごとに気合がほとばしる。「うりゃっ!」「おりゃっ!」「しゃっ!」。最速155キロ右腕の慶大・木沢尚文投手(3年=慶応)は「(声は)無意識に出ますね。昔からです。マウンドは譲るものじゃない」と、端正な顔で静かに話した。気持ちを前面に出す投球スタイルとは対照的。慶応ボーイらしからぬ? という振りには「そう言っていただける方がうれしいですね」と笑みをこぼした。

大学で投球スタイルを再認識した。高3春に右肘を痛め、進学後もリハビリが続いた。ケガの影響もあったか、イップス気味にもなった。投球フォームを模索する日々。林前助監督の言葉が忘れられない。「木沢、本気でやってるか? 本気の意味をもう1回、考えろ。バッターと1対1のタイマン勝負だぞ」。

努力を重ね、球速は高校時の143キロから10キロ以上、伸びた。カットボールもいい。だが、一番の武器はと聞かれると「マウンド度胸です。いくら四球を出しても、ヒットを打たれても、ランナーをかえさなければいい」と即答した。ドラフトイヤーを迎えた。本気を見せる。【古川真弥】