阪神西勇輝投手(29)が今季3戦目の先発で初勝利をつかんだ。広島戦で8回6安打3失点の力投で、チームの初連勝にも貢献。

「流れを感じながら、チームの得点も意気に感じて、最少失点で切り抜けるように頑張っていました」

2回先頭の4番鈴木誠に二塁打を浴び、無死一、三塁から内野ゴロの間に先制を許すも1失点で踏ん張った。4回も鈴木誠にソロ、6回に松山に適時打を許したが、各イニング傷口を最小にとどめて粘った。

「投手として完投を目指すのは当たり前だと思いますし。最低限の仕事をしただけかなと思います」

122球の力投には、エースの責任感が込められていた。矢野監督も「9連戦なんで、粘ってくれてちょっとでも長く投げてくれたというのは助かった」と感謝した。

巨人菅野から独り立ちし、初めて単独自主トレを行ったこのオフ。西勇はハワイでもう1つ、初めて挑戦した。「何かつらいことをしたかった」。選んだのは42・195キロのフルマラソン。ヤシの木が並ぶビーチ沿いを…という楽しいものではなく、走ったのは、地元住民が集まるごく普通の公園。腕時計で距離を測りながら、朝からひたすら公園をぐるぐる走り続けた。

途中バナナで栄養補給し、また走る。そのうち公園で昼寝をしていたハワイアンたちが、異質な存在に気づいた。「クレイジーボーイ!」。飛んできたそんな声もお構いなし。約20周して6時間53分55秒、初のフルマラソンを走り抜いた。「つらいのがポイント。達成感は今までで一番くらい」。完走後の冷たいビールが体に染み渡った。苦しい思いをして何かを成し遂げる-。逆境に立ち向かい1年間を戦い抜くメンタルを南国の地で手に入れた。

試合後、西勇に笑みはなかった。「ほっとはしないです。次が大事ですし。3戦、ゲームをつくれていると思いますんで、スキを出さないようにやっていきたい」。勝利の余韻に浸ることなく、もう次戦を見据える。昨季は4月7日にマツダスタジアムで移籍後初勝利を挙げ、チームトップの10勝。今年もここから白星を積み重ねる。【磯綾乃】