師弟の絆が、バットに乗り移った。楽天内田靖人内野手(25)が7年目でプロ初の2号満塁弾を放った。7回に西武平良の155キロを右翼席へ運び、決勝点を生んだ。自主トレをともにした師匠の浅村栄斗内野手(29)も同点2点適時打を放つなど、4打数4安打4打点1本塁打と躍動。2人のスラッガーの活躍で首位のチームは連敗を2で止め、2位ソフトバンクとのゲーム差を1とした。

  ◇    ◇    ◇

師匠の笑顔が、何よりもうれしかった。同点の7回2死満塁から決勝弾をたたき込んだ内田は、本塁で待つ浅村にベシッ! と気持ちよく頭をはたかれた。「すっごくうれしかったです」。西武平良の初球。狙っていた外角155キロ直球へ素直にバットを出した。右翼席前段へ値千金の一撃。表情を緩めずにダイヤモンドを走りきったが、恩人を前に笑みを隠さなかった。

昨年10月、人生が変わった。フェニックスリーグで訪れた宮崎。同地でのプレミア12の侍ジャパン合宿に参加し、同じ宿舎に滞在していた浅村に「自主トレを一緒にやらないか?」と言葉をかけてもらった。師匠の加入1年目の昨季は1軍出場2試合のみ。会話はほとんどしたことがなかった。「本当は自分から言わないといけない。でも何かをつかみたかった」。

教えを愚直に繰り返した。今年1月、愛媛での自主トレは午前9時半ごろからランチまでみっちりと体幹トレ。午後はスタンド目がけてロングティー。浅村が繰り出す快音、きれいなスピンのかかった打球を目指した。「右方向へ強く打て」との助言通り振りまくった。練習後は同僚でともに参加したオコエ、フェルナンドらと並び、箸をつつきながら野球談議。ゆったりと構えるフォーム、バットの形状も参考にし、やれることは何でもやった。

この日も言葉に救われた。6試合ぶりの先発を控えた試合前。「(右の)軸足のかかとに体重がかかり過ぎる」と問い「ちょっと内側に入れてみたら?」と返答された。1打席目に試すと下半身の粘りが増し、課題に感じていた低めのボール球を追いかけずに済んだ。ひと言で迷いが消えた。

今季初のお立ち台。隣に浅村がいた。「今年最低でも1回は一緒に立ちたかった。僕が初めてのヒーローの時に浅村さんも一緒で本当にうれしかったです」。何度もこのひとときを味わいたい。チーム、自分、そして師匠のためにも、殻を破る。【桑原幹久】

◆内田靖人(うちだ・やすひと)1995年(平7)5月30日生まれ。福島県いわき市出身。常総学院では2年夏、3年春夏の甲子園に出場し、3年夏は2本塁打。松井裕樹(桐光学園)森友哉(大阪桐蔭)らとともに13年の高校日本代表に選ばれた。13年ドラフト2位で捕手として楽天入団。通算101試合、291打数54安打、16本塁打、40打点、打率1割8分6厘。185センチ、86キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸1200万円。