巨人菅野智之投手(30)が、中日大野雄との「究極のエース対決」を制した。7回5安打無失点で、開幕戦から無傷の10連勝。球団では38年春のスタルヒン(11連勝)以来2人目の快挙を達成した。最速153キロの速球を軸に、フォーク、カットボール、スライダー、パワーカーブの5球種を緩急すべての球速帯で織り交ぜた。チームは今季最多の貯金19。原監督は、川上哲治氏が持つ巨人監督の通算勝利記録1066勝に王手をかけた。

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ストライクゾーンに、菅野は威力ある速球を投げ込んだ。1回1死一塁。福田を2球で追い込み、149キロを勝負球に選んだ。3球勝負でバットを動かさず、見逃し三振を奪った。6奪三振中、速球が3つ。フォークが2、宝刀スライダーは1。この内訳が断固たる決意を物語っていた。

3年前の17年春。引退した元広島の黒田博樹氏からもらった言葉がずっと胸にある。深い面識はなかったが、関係者を通じて長文メッセージが届いた。中でも忘れられない一節-。

「菅野君は、日本の野球を変えられる」

「フォーシームも、ワンシームも一級品のボール」 日米通算203勝の右腕から「変革者」に指名された。

ストライクゾーンの中でボールを微妙に動かし、かつ逃げず、球威で押し込む。直前のWBC準決勝。米国投手のゾーン内で変化するパワーボールを目の当たりにした。先輩からのエールは、世界の基準そのものと受け止め、スタイルを追い求めた。ファウルを含めたストライクが71球、ボールは30球。7回5安打無失点に抑え込んだ。

子どものころから、力に対する強い憧れがあった。バスケットボールではパワーフォワードで有名なスパーズのダンカン、サッカーのゲームでは、イブラヒモビッチ、アドリアーノらDFを力で蹴散らす、パワーフォワードが属したインテル・ミラノを好んだ。

マウンドでも、中日大野雄との力比べに勝った。試合前のスタメン発表後「究極のエース対決」と表現された一戦。5試合連続完投中の絶対エースに気迫をむき出しにした。

菅野 「負けないぞ」という気持ちでやってきた。6試合全部投げ切るというのは本当に尊敬しますし、並大抵のことじゃないので。その中で勝てたのは財産になります。

相手の連続完投勝利を止め、球団ではスタルヒン以来2人目の開幕戦からの10連勝。最高峰の時間を共有し、充実感に包まれた。「あまりピンとこないですけど、ジャイアンツの歴史に名を刻むことができてうれしいです」。まだ見ぬ頂に挑戦する。【久保賢吾】