矢野阪神が絶体絶命の危機に立たされた。先制直後の1回裏に先発青柳晃洋投手(26)があっさり逆転を許すと、その後は防戦一方。投打ともに覇気なく、引き分けを挟んで3連敗。首位巨人に10ゲーム差をつけられた。10差からの逆転優勝は過去に7度しかない。10日にも自力優勝の可能性が消滅。せめてもの意地を見せてくれ。

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激しい雨がグラウンドを打ちつけ、雷鳴がとどろいた。9回2死一塁で6番ボーアがスライダーを空振り三振に倒れてゲームセット。絶対に負けられない試合を落とし、首位巨人との差はついに今季最大の10ゲーム差まで広がった。ペナントレース最大のピンチだ。今が苦しい時期? そう問われた矢野監督は「ずっとしんどいよ。しんどい中で(勝率)5割でしょ」と思わず本音がこぼれた。そして「ジャイアンツとの差を比べたら、俺らは勝っていかないとダメというのは自覚している」。言葉には悲愴(ひそう)感が漂った。

開幕から続く問題が解消できない。先発青柳は1点リードの1回に4番佐野に勝ち越しの左翼線適時二塁打を許し、5回にも2点適時打を浴びた。前夜に3ランを放った主砲に、3安打3打点とやられ放題。阪神戦で打率3割8分6厘の佐野だけではなく広島鈴木誠、巨人岡本らセ界の4番たちはタテジマ相手に打ちまくる。チームとして食い止めることが出来ない。

打線のオーダーにも首脳陣の苦悩が見て取れる。矢野監督は「3番が決まらんからしんどいわな。どうしても。大事な打順であるっていうのは分かっているんだけど」と嘆いた。3試合ぶりに先発出場した糸井が3番で先制犠飛を放ったが、本調子とは言えず休養日を挟んでの出場が続く。陽川、中谷ら日替わり3番ではクリーンアップが固定できない。

勝負の9月に情けない試合が続き、最短で10日にも自力優勝の可能性が消滅する。さらに絶望的な数字が立ちはだかる。首位と10ゲーム差をひっくり返して優勝した例は長いプロ野球の歴史でも、11年中日などわずか7例しかいない。歴史的なミラクル進撃を続けない限り、15年ぶりリーグ優勝はあり得ない。

試合終盤には目の覆いたくなるシーンがあった。8回に4番手で登板した望月が2四球と1死を取っただけで交代。代わったルーキー小川はまさかの2球連続暴投…。それでも矢野監督は9回に大山がぬかるんだ打席で放った遊撃内野安打を引き合いに出して力を込めた。「ああいう安打は意味があると思う。1人1人がやっていくしか打開策もないし、成長もない。日々やるしかない」。可能性がある限りはファイティングポーズを崩さない。【桝井聡】