新人王をグイッと引き寄せた。広島森下暢仁投手(23)が6回無失点の力投で8勝目を手にした。最初から最後まで、丁寧かつ大胆に攻めた。1回に不運な安打も重なり、いきなり無死満塁のピンチを招いたが「ゼロで抑えたい気持ちでした。抑えたら雰囲気が良くなるなと思った」。4番村上を空振り三振、ベテラン青木は三ゴロに打ち取り、最後は中山を150キロ直球で空振り三振に切った。

新人ながら、要所を理解している。まずは立ち上がりだ。長いイニングを投げることを意識したマウンドでも、1回だけで29球。2週続けて対戦となったヤクルト相手に慎重を期した。今季15試合に登板して1回に失点した試合は2度しかなく、11試合連続で1回を無失点で滑り出す。先制点を与えぬ投球が安定感につながっている。

ピンチでは、より集中力が研ぎ澄まされる。1回に続き、3点差の6回は1死満塁を迎えた。代打宮本にはフルカウントから捕手のサインに2度首を振り、低めカットボールで空を切らせた。続く西浦には直球を3連投。見逃し三振を奪った。被打率2割3分9厘は、得点圏では被打率2割2分5厘に下がる。巨人菅野(得点圏被打率2割1分8厘)にも引けをとらない。特に今季10度迎えた満塁では1安打しか打たれておらず、7三振を奪っている。

新人王を争う巨人戸郷に並ぶ8勝目。規定投球回に到達し、奪三振率9・49は、リーグ奪三振王の中日大野雄の9・25を上回る。新人王へ大きな1歩となる勝利にも「1試合1試合結果を出してつかみ取れればいい」と冷静だ。すべてに新人離れした右腕が、チームの連敗を止めた。【前原淳】

▽広島佐々岡監督(2度の満塁のピンチがありながら無失点の先発森下に)「本当に並大抵のことではないと思う。いい心臓を持っていると思う。初回も、6回も気持ちの入りようが素晴らしい。本当にナイスピッチングとしか言いようがない。本当に気持ちの強い子だなと思う」