来季の戦力構想から外れた阪神上本博紀内野手(34)が3日、兵庫・西宮市の鳴尾浜球場で最後の練習を終えた。2軍首脳陣やナイン、スタッフへのあいさつを終え、「本当に感謝の気持ちでいっぱいです」。生え抜き12年間のタテジマ生活に別れを告げ、今後は他球団での現役続行を目指す。

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上本は節目のあいさつを律義に交わし終えると、大荷物とともに鳴尾浜のグラウンドに別れを告げた。

「12年間、球団にお世話になったので本当に感謝の気持ちでいっぱいです。今のところはあまり実感が湧いていない感じなので。これからどんどん寂しくなると思うんですけど、現実をしっかり受け入れようとしているところです」

すでに来季の戦力構想から外れており、今季限りでの退団が確実となっている。タテジマで最後の練習を終えた直後、ありのままの感情を言葉に変えた。

阪神在籍12年のうち、3シーズンで規定打席に到達。14年からの3年間は選手会長も務めた。パンチの効いた打力と俊足を武器に、欠かせない存在として長年チームを支えた。

ただ、18年5月に左膝を負傷し、同6月に前十字靱帯(じんたい)を手術。長期リハビリ後は出場機会を減らし、今季は1軍25試合出場で打率1割7分1厘と本来の実力を発揮できていなかった。

阪神最終試合となった1日の2軍ソフトバンク戦(タマスタ筑後)では敵地にもかかわらず、大勢のファンが駆けつけてくれた。

「試合中はいつも野球に集中しなきゃ怖いので周りは見えないんですけど。最後、あんな遠くまでタオルとかを持ってきてもらって…。応援してくれた人には本当に頭が上がらないぐらい感謝しかないです」。

幸い、左膝の状態は良好。支えてくれたファンへの思いを体現するためにも、今後は他球団での現役続行の道を模索する。

「タイガースではケガばかりで心配をかけたりした。なんとか最後、活躍している姿を応援してくれた人へ…。身内とか、本当に最初からずっと応援してくれていた人に見せられるように、頑張っていきたい」

球団からは1軍最終戦となる11日DeNA戦での退団試合も打診されたが、丁重に断ったという。まだ挑戦を諦めない。【佐井陽介】

◆上本博紀(うえもと・ひろき)1986年(昭61)7月4日生まれ、広島県出身。広陵高では甲子園に春夏通じて4度出場し、2年春には優勝を経験。早大に進み、1年春のリーグから全104試合フルイニング出場を達成。4年時には主将を務めた。08年ドラフト3位で阪神に入団。14年に選手会長に就任し16年まで務めた。規定打席に3度到達したほか、内野のスーパーサブとしても存在感を示した。173センチ、66キロ。右投げ右打ち。