宜野座は佐藤祭り! 阪神ドラフト1位の佐藤輝明内野手(21=近大)が9日、21年初の対外試合となった練習試合の日本ハム戦(宜野座)に2番左翼で出場し、プロ1号を含む猛打賞3打点の鮮烈デビューを飾った。初回の初打席で弾丸の右前打を放つと、5回は一時逆転の2ランを右翼へ、7回は勝ち越し決勝のタイムリー二塁打を右翼線に運んだ。かつて、これほど劇的な船出を飾った阪神のルーキーがいただろうか。黄金伝説の始まりだ。

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佐藤輝は打球が右翼ポール際に飛んだ瞬間、スタンドインを願って駆け出した。「切れるか、切れないか…」。だが、内から技ありで出したバットは白球を切れさせることなく、ポールの内側に弾ませた。紅白戦も含め、実戦9打席目で出たプロ初アーチ。しかも、技ありの逆転2ランだ。だが表情は崩さず、淡々とダイヤモンドを1周した。その姿はドラフト1位指名された瞬間も笑顔を見せなかったあの時と同じ。どっしり構えた背番号8がいた。

1点を追う5回無死一塁。カウント1-2から、日本ハムの2年目右腕、鈴木健の内角低めスライダーを捉えた。「反応してしっかり運ぶことができたと思います」。初回の第1打席は西村のスライダーを右前打。同点の7回は立野の真っすぐを捉え、右翼線に決勝の二塁打を決めた。5打数3安打3打点。「気づいても、考えてもいなかった」。三塁打が出ていれば、サイクル安打の衝撃だった。

結果が出なくてもブレなかった。7日の紅白戦は藤浪の速球に当てることすらできず、実戦成績は6打数1安打。だがこの日の試合前練習でも高校時代からこだわる「置きティー」で白球をはじき返した。止まっているボールは投手をイメージしやすく、高さを変えながら多様なコースに対応できるという佐藤流の調整法だ。そして「合わせにいくのは嫌」と持ち前のフルスイングを貫いた。4打席目の二塁打は実戦で初めて直球をはじき返してのHランプ。自分を貫いたからこその対外試合初打席初安打、一時逆転のプロ1号、そして決勝二塁打だった。

キャンプ初休日の5日、第2クールで「ホームランを打てるように」と“予告”していたプロ初アーチを有言実行。だが、本人は最後まで冷静沈着だった。「結果が出た半面、反省点もいっぱい出た。次に生かしていこうという感じです」。眉ひとつ動かさなかった。「これをスタートとして、もっとどんどん打っていけるようにやっていきたいと思います」。佐藤輝明。その名の通り、明るく輝く黄金伝説の幕開けだ。【只松憲】

▼阪神のドラフト1位新人佐藤輝が、日本ハムとの練習試合で2ラン本塁打を放った。初の対外試合で本塁打を打ったのは、17年のDeNA細川や08年日本ハム中田の例があるが、阪神の近年の新人野手では、大山らも初の対外試合で1発は打っていない。なお、04年の鳥谷敬がオープン戦4試合(16打席目)、80年の岡田彰布がオープン戦2試合(5打席目)で初本塁打を打っているが、69年の田淵幸一は16試合(60打席目)でやっと初アーチを放っている。

◆春季キャンプ中の阪神戦 米アリゾナでキャンプインしていた16~19年を除き、阪神との練習試合がその年の対外試合初戦となるケースが多い。08年は高卒1年目だった中田が、名護の左翼場外へ消える推定130メートルの特大弾。15年には3年目だった大谷も、同年の実戦初打席となる第1打席に、左翼席へ本塁打を放っている。