日本ハムのエースがマー君に投げ勝った。先発した上沢直之投手(27)が、7回3安打1失点と好投。今季4度目の登板で待望の初勝利を挙げた。全国の野球ファンの注目が集まった楽天田中将大投手(32)の国内復帰戦で、本来の力強い投球内容が復活。開幕投手を務めた先発陣の大黒柱が、ようやく本領発揮だ。

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見事な有言実行だった。試合後の上沢は自虐的に言った。「スポーツニュースは盛り上がらないと思いますけど、すごくうれしいです。僕は映らないですよ」。8年ぶりにマー君が国内公式戦で投げた、注目の一戦。登板前日に「勝ち星に飢えているので。世間の期待とは逆の結果になったらいいと思います」と話していたエースは、力強い投球で日本ハムファンが期待していた結果をもたらした。

開幕投手を務めてから4試合目で、ようやく苦しかったトンネルを抜け出した。プレーボールと同時にギアを入れた。開幕戦で先頭打者本塁打を浴びた辰己から空振り三振を奪って立ち上がった。「同じ相手に何回もやられていたら、なかなか勝てないと思う。今日はたまたましっかり抑えられてよかったです」と、リベンジを果たして初回は3者凡退スタート。勢いに乗ることができた。

その裏は投手の本能がくすぐられまくった。初めて生で見た田中将の投球は刺激的だった。「オーラを感じた。投球フォームが、きれいでした」。さらに力をくれたのは試合前に「絶対に中田さん、大丈夫です」と励ましていた大将中田の先制弾だ。「みんな大将のホームランを待っていた」。待望の1発に応えないわけにはいかない。「チームにしっかり勝ちを付けないと」と、エースの自覚が力投の原動力となった。

試行錯誤しながら、渇望していた勝利を手にした。開幕戦で勝てず、次の登板からは投げる前に左足を横に引く投球フォームに微修正するなど、必死に復調を目指して取り組み、大きな結果が出た。「まだ1勝2敗で僕自身、借金をつくってしまっているので、早くこの借金を貯金に変えていきたい」。出遅れを取り戻す時間はたっぷり残っている。エースの真価発揮は、ここからだ。【木下大輔】

▽日本ハム栗山監督(開幕投手の上沢が4試合目の登板で今季初勝利)「1つ勝って落ち着くと思う。ここからはナオらしくやってくれると思う」

○…日本ハム対楽天戦を視察した侍ジャパン稲葉監督がマー君とともに上沢にも熱視線を送った。「今日、楽しみにしていたもう1人のピッチャーなので。彼も日米(野球)でメジャー相手に抑えたというのもあります。これまで何か勝ちに恵まれない部分はありましたけど、今日は田中投手と投げ合いでしっかり投げ切れていた」と評価。東京五輪へ向けて「彼もこれから見ていきたいと思います」と有力候補として継続視察する考えを明かした。

<上沢のシーズン初勝利>

◆14年 高卒3年目の4月2日ソフトバンク戦にプロ初登板初先発。6回を3安打1失点に抑え、初勝利を挙げた。

「率直にうれしいです」

◆15年 4月3日オリックス戦でシーズン初先発。初回に失点したが、尻上がりに調子を上げ、2時間34分で2安打完投勝利。

「力まないで投げた。そんなに疲れも感じなかった」

◆16年 右肘手術の影響で1軍登板なし

◆17年 4度目の先発となった7月2日ロッテ戦は6回1失点で726日ぶりの勝利。

「泣くかなと思ったけど、意外とそんなことなくて変な気分」

◆18年 シーズン初先発となった4月3日の楽天戦は7回5安打無失点で勝利。相手先発岸相手に互角の勝負を演じた。

「相手のテンポにつられて良い投球ができた」

◆19年 3月29日のオリックス戦で初めて開幕投手を務めたが白星はつかず、2度目の先発となった4月5日の西武戦で7回6安打1失点で初勝利。

「連敗を止めたいという一心で投げた。早い段階で勝ててうれしい」

◆20年 前年6月に左膝を骨折してから復帰3度目のマウンドとなった7月28日のオリックス戦は7回7安打1失点。413日ぶりの勝利となった。

「つらかったんですけど、いつかこういう日が来ると信じて頑張ってきました」