大投手への1歩目を踏み出した。ロッテ佐々木朗希投手(19)が16日、西武戦(ZOZOマリン)でプロ初登板初先発を果たした。5回4失点、最速は154キロ。勝ち負けはつかなかった。6安打5盗塁を許しながら、5三振を奪った。ドラフト会議から1年7カ月後のデビュー。全71球投げた直球の平均球速は約151・2キロ。高校時代の163キロには及ばずも、制球を崩さない新たなスタイルで圧倒的な投手を目指す。

  ◇  ◇  ◇

鳴り響く拍手に内なるチカラが湧いてきた。2年目の春、ついにデビュー。佐々木朗は「疲れました」と少し笑った。「うれしいですし、たくさんの人たちに去年からサポートしてもらっていたので、1軍の舞台で投げられて良かったかなと思います」とあふれる感謝を口にした。

佐々木朗希は“今の佐々木朗希”を投げた。163キロの再来はまだ先の話。直球71球のうち、64球が150~154キロに収まった。緊張の舞台ながらストライク率は65・4%。「ある程度しっかりゾーンというか、いいところには投げられていたのも多かったと思うので」と最大の収穫を挙げた。

昔から負けず嫌い。打たれると魂に火がついた。高3時の練習試合で2年生打者に本塁打を浴びた。直後、球速ベースを一気に5キロ上げた。プロ入り後もシート打撃で157キロを本塁打にされた直後、160キロを投げ込んだ。「本塁打でさらに集中力が増したと思います」と明かした。

今は違う。ピンチを迎えても球速帯は一定だ。「力はしっかり伝えているんですけど」としながら、球速表示に大きな変化はない。大船渡高で青春を共有した仲間たちもスタンドで見守る中、球威と制球で制するスタイルでデビューした。スパンジェンバーグには2打席で5度、直球で空振りを奪った。

左足を高く上げるフォームが代名詞だ。高校時代、過酷な真夏の試合でも左足つま先は鼻近くまで高く上がった。中学でケガをし、柔軟性を追求したことで生まれたフォーム。足の高さは球速への推進力を生む。今はあごの位置まで。キャンプ時はもっと低かった。試行錯誤を重ねた石垣島で「もちろん初めて見た人には特徴的で印象的かもしれないですけど」と前置きしながら、言った。

「それよりも大事なのは、やっぱりボールだと思うので。僕もあの足の上げ方は、何となく全体的な動きがしっくりきて好きなんですけど、ボールが良くなるなら。どんどんいいものを求めていくには、どんどん変わっていくと思います。やっていく中で一番いい投げ方でいきたいです」

希代の投手になるため、変化を恐れず進化する。許した5盗塁は勝ちを重ねるための宿題だ。「とてもいい経験ができたと思うので、どんどん修正していきたい」と前向きに捉える。「しっかり相手を圧倒できるように、いろんなところの精度を上げていきたいと思います」。白星はつかなくても希望につながる107球。物語のページが1枚、めくられた。【金子真仁】