阪神遊撃の中野拓夢内野手(25)が、神業のスーパープレーで同点の危機を救った。1点リードの5回無死一、三塁。二遊間は走路付近に構える中間守備を敷いていた。7番野間の二塁ベース付近へのゴロをさばくと、三塁走者坂倉を目でけん制しながら二塁ベースを踏んでまず1アウト。流れ的に6-4-3の併殺が定石で、同点はやむなしかと思われた。だがその野性的本能は瞬時に、周囲を驚かせるビッグプレーを呼んだ。なんと振り向きざまに腕を振り、ホームへストライク送球。間一髪のタッチアウトももぎ取る“変則ゲッツー”に仕留めたのだ。

「打った瞬間に三塁走者が動いていなくて。自分がベースに向かった瞬間に動いたのが見えた。あそこは迷いなく投げました」

事前の準備が生きた。直前に林に左前打で出塁されると、野手陣がマウンドに集まった。そこで「三塁走者をかえさない」と最優先事項を確認した。

「まずは三塁走者をアウトにするということ。打球に応じて対応できたのは良かった」

頭でしっかりと作戦を理解し、瞬時に実践。優れた“野球脳”で難易度の高い芸当をやってのけた。無死一、三塁を一気に2死一塁とし、この回無失点に導いた。このプレーがなければ同点は免れず、試合はどうなっていたかわからない。まさに陰のMVPだ。

矢野監督も「あれデカかった」とうなった。「野球センスというか視野の広さっていうか。普通にファーストって決まり事のようにいってしまっていたら、1点入っていたから。本当に素晴らしい超ファインプレーやと思う」と最敬礼だ。

6回表無死一塁では、左前打で自身25打席ぶりの安打を決めた。前日2日にはスタメン落ちを経験し、指揮官や井上ヘッドコーチらに「こういう時期は来るから我慢。どう乗り越えるか考えてやっていけ」とアドバイスを受けていた。ようやく出た1本に「これからにつながる。これをきっかけに、いい準備をしながらやっていきたい」。流れはつかんだ。再び上昇気流に乗っていく。【中野椋】