大山よ、輝よ、もっと強くなれ! 阪神矢野燿大監督(53)が、沖縄・宜野座キャンプ第3クール最終日の13日、4番を争わせる大山悠輔内野手(27)と佐藤輝明内野手(22)に今年初のノックの雨を降らせた。限界まで挑戦させる矢野阪神のキャンプ名物「デス(死の)ノック」で約50分間、トータル491本。今季限りで退任する指揮官が両雄の飛躍を願い、キャンプで振るう最後の愛のムチは、2人にしっかり届いた。

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矢野監督が打撃用手袋を両手にはめ、ノックバットを握りしめた。三塁ベース付近に並ばせたのは、大山と佐藤輝だ。最初は正面の簡単なゴロだったが、次第に三塁線ギリギリや三遊間と次第に難易度を上げた。打つこと約50分、トータル491本。「やっている選手はしんどいやろうけど、俺は大丈夫」。笑う視線の先には、泥だらけの大山とヘトヘトな佐藤輝がいた。

第3クール最終日。メニュー表に「“愛の無事着”デス」と書かれた毎年恒例、限界に挑戦させるデスノック。矢野監督が今年初めてノックを打つ相手に選んだのは4番を争う2人だった。指揮官は「中心で頑張ってもらわないと」と説明。井上ヘッドも「チームの競争意識を高めるじゃないけど、2人が頑張らないと阪神の浮上はないと思うので指名した」と補足した。

主軸でフルに働くために体力的、精神的に強くなってほしい願いを込めた。2年目で初めてデスノックを受けた佐藤輝は、体力不足と判断して先にお役御免にした。「振る力はついてきたけど、守備とか継続してやることは苦手。大山との違いは歴然。こういうことを経験しながら本当のいい打者、強い選手になってもらえたら」。今季限りで退任する指揮官が贈る、最後の愛のムチだった。

佐藤輝は合計233本で31失策。15分長く受けた大山は258本で10失策。佐藤輝は「しんどかった。(大山さんは)もう、すごい体力があるなと、改めて思いました」とすごさを間近で実感。大山は「メンタル面も鍛えられる。すごく大事な練習」と振り返った。

「“愛の無事着”デス」は発案者の井上ヘッドコーチが、昨年日本で人気になった韓国ドラマ「愛の不時着」をにちなんだ。「過酷な練習を選手がケガなく無事に終えられるように」の思いが込められていた。14日のオフを挟んで、キャンプはいよいよ折り返し。恩返しバトルがさらにヒートアップする。【石橋隆雄】

◆大山と佐藤輝のキャンプ実戦 ここまで4試合で交互に4番を務め、大山が打率4割5分5厘(11打数5安打)、1本塁打、2打点。佐藤輝が打率4割6分7厘(15打数7安打)、1本塁打、2打点とほぼ互角の数字をたたき出している。大山は三塁が本職だが、佐藤輝も志願して三塁を守り、バトルが白熱している。