西武中村剛也内野手(38)が今季2号の記念弾を放った。プロ入り21年目のベテランは、これで通算444本塁打。歴代14位タイとなり、国民的スーパースターの長嶋茂雄氏に並んだ。

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大阪桐蔭に入学した直後、西武中村剛也は「盗塁の鬼」だったらしい。貴重な証言の主は高校時代の同期、元阪神岩田稔氏だ。

「一番最初に何が驚いたかというと、その足の速さ。高校時代から『ドカベン』みたいな体形でしたが、隙あらば盗塁を決めていました。投手の癖を盗むのもうまくて、確か同期の中で2番目に盗塁数が多かったんじゃないかな」

入学当初のポジションは捕手。岩田氏が同校の練習で初めてバッテリーを組んだ相手が、他ならぬ中村だった。もちろん当時から非凡な打撃を披露していたが、最初は現在のスタイルとはやや違っていたそうだ。

「どちらかというと、今みたいに高々と打ち上げるというよりは、痛烈なライナーで左中間、右中間を抜いていくイメージ。そこからある日突然、ホームランアーチストに変貌を遂げていったんです」

岩田氏には脳裏に焼きついて離れない“事件”がある。「あれは確か高校2年の春だったと思うんですけど…」。試合前のシートノック中、中村が右手小指を骨折。それでも出場を志願して譲らず、仕方なく激痛が走る右手小指の使い方に変化を加えたのだという。

「ゴルフの握り方でいうオーバーラッピングのように、左拳にそっと添えるようにして打ってみたら、打球の質が一気に変わったんです。打球がめちゃくちゃ上がるようになって、外野フライがそのままフェンスオーバー。今の剛也のスタイルが徐々にでき上がっていったんです」

最終的には高校通算83本塁打。岩田氏は「あの骨折がなかったら、どうなっていたんでしょうね」と懐かしそうに振り返る。

プロでは19年6月22日の甲子園で2打席連発を献上。「何を投げても打たれてしまうイメージしかなくて、もうお手上げでした」。リスペクトしてやまない同期は7日、ついに長嶋茂雄氏に並ぶ通算444本塁打に到達した。

「阪神で16年間、数え切れないぐらい多くの強打者と対戦させてもらってきたけど、僕の中での最強打者は中村剛也しかいない。剛也にはまだまだ4番に君臨してもらいたい。できることなら50歳近くまで現役を続けてほしい」

かつての仲間はもちろん、アーチスト中村剛也のさらなる本塁打量産を信じてやまないようだ。【遊軍=佐井陽介】

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