希代のスラッガーゆえの新たな“勲章”だった。

西武中村剛也内野手(38)の通算三振数が1955となり、清原和博氏(54)の日本記録に並んだ。8回。オリックス本田の154キロ直球に空振り三振を喫した。プロ21年目、1913試合目、7497打席目。現役最多の446本塁打は、安打数の4分の1以上を占める。極め続けた1発の道。だからこそ、到達できた偉大な記録でもあった。

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本塁打か、三振か-。そんなスイングは人々を魅了する。中村の通算三振数が1955となり、日本タイ記録となった。球団OBの清原氏の2338試合に対し、1913試合目。425試合早い到達となった。その場面は8回2死二塁。カウント2-2からの5球目。本田のインハイ154キロ直球にバットは空を切った。「三振はしたくはないですけど、仕方ないかなと思ってやっている」。唇をかみしめ、ベンチに戻った。

本塁打王6度、通算446本塁打、歴代最多22本の満塁弾。いくら三振を重ねても、打席に立ち続けることができる。それは補って余りある期待を背負い、結果を残してきたからに他ならない。並の選手ならば、代えられる。ここまでの数字を残せない。まさに名誉と表裏一体。ある意味“勲章”ともいえる記録だった。この試合も5回、7回と二塁打を放った。

三振を恐れない-。そのスタイルにたどり着く、指針を与えてくれた師がいる。入団1年目から2軍打撃コーチとして指導を受けた田辺徳雄現2軍野手特命コーチ。「三振に関しては、何も言わない」。そう信念を貫いた指導を受け、それが礎になった。

誰にでも、そう指導するわけじゃない。中村は類いまれなる才能を示していた。1年目のキャンプが終わった春。ロングティー。2軍練習施設である「西武第2球場」の左翼後方にあるネットを軽々と越えていった。高校を卒業したばかり。田辺コーチも、そんな選手はかつて見たことがなかった。「力を入れなくても、上がった時の打球はすごかった。率を残そうと思えば、できるんだろうけど、飛距離、本塁打に魅力を感じなくなってしまうかもしれない。とにかく1年目から本塁打にこだわって欲しかった」。欠点をなくすより、圧倒的な長所を伸ばす。そして両極端なスケールの大きな打者に育った。

あれから約20年の月日がたった。年を重ね、髪も少し、白くなった。中村は「いつまでたっても、やっぱりホームランを打ちたい」。今も変わらず、1発こそ自らの野球道だ。実に安打の4分の1以上をスタンドまで運んできた。常識では考えられない。その三振の多さも、立派な生きざまでもあった。【上田悠太】

 

○…森(8回にフルスイングで右翼へ2号ソロ。大阪桐蔭の先輩中村とベンチでハイタッチ)「打った瞬間、手応えはバッチリでした!」

○…辻監督(中村の日本タイ記録となる通算1955三振について)「通過点。そりゃ、そうやろ(笑い)。ホームランバッターって、そういうもの。でも今日もいいところで2本を打っているし、いいところで打てるバッター」

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