プロへの扉を切り開く。仙台6大学野球秋季リーグ戦が、9月3日に開幕する。2季連続Vを狙う東北福祉大・杉沢龍外野手(4年=東北)がラストシーズンに挑む。今春のリーグ戦は、打率5割5分、4本塁打、14打点で3冠王に輝き、ドラフト戦線へと名乗りを上げた。大学日本代表にも選出された3拍子そろった好打者が集大成の秋にする。

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勝負のラストシーズン。杉沢は平常心で駆け抜ける。

「(最後のシーズンを)意識はしない。今まで通りにやるだけ」

走攻守3拍子がそろったみちのく屈指の好打者だ。今春リーグ戦では打撃部門「3冠」を獲得。MVPも受賞し、充実のシーズンを送った。「秋は攻められ方も変わってくる。ボールを打つだけじゃなくて、配球、相手バッテリーのことを考えながら打席に立たないと結果は残せない」。相手のマークが厳しくなることは想定内。チームメートの捕手陣らに配球論を聞き込み、対策を練る。今までは「反応で打っていた」と技術で対応するも、「頭の方も使って打っていく」。春とはひと味違うスタイルを確立させていく。

侍の一員となり、貴重な経験を積むことができた。大学日本代表として第30回ハーレム・ベースボール・ウイーク(7月8日から8日間、オランダ)に参加。世界を相手に戦い、自らの今後の課題を身に染みて感じることができたという。「対応力がまだまだ。日本人の真っすぐとは違って、ボールが滑ってくるような感覚。対応できなかった。対応できるようになったら、追い込まれてからも強い打者になれると思う」。

今秋のドラフト候補に挙がり、夢のプロ野球選手が現実味を帯びている。意識し始めたのは、高校1年夏にさかのぼる。当時は東北(宮城)で甲子園に出場。初戦で藤平尚真投手(楽天)擁する横浜(神奈川)と対戦した。杉沢はこう振り返る。「これがプロかと。見た時に思いました。この球を打てるようになったらプロに行ける」。その一戦は5打数無安打2三振で、チームも敗れた。完璧に抑え込まれたが、漠然としていた夢がイメージできる、ひとつの分岐点となった。

昨秋は、仙台大に7季連続リーグ優勝を阻止され「涙の2位」に終わった。「自分は3番(打者)を打っているので、試合を優位に進める一打を放っていく」と自分の仕事に徹し「個人個人では弱いと思う。チーム一丸で勝っていく」。ワンチームの野球で歓喜の瞬間を迎える。【佐藤究】