今季限りでの現役引退を表明した能見篤史投手兼任コーチ(43)が16日、京セラドーム大阪で会見を開いた。阪神で15年間チームメートだった日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(41)は2歳上の先輩を「必ずみんながついて行く人柄」と表現。13年WBCの思い出もよみがえらせながら寂しさを募らせた。【聞き手=佐井陽介】

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能見さんには13年WBCで時間を共有させてもらった期間も、本当に良くしていただきました。阪神から侍ジャパンに選ばれた選手は能見さんと自分だけ。同行した伊藤健治トレーナーとずっと3人でいた記憶があります。その中で能見さんは1番年上だったのに、ご飯のお店を探す時も「年上感」を一切出さない。後輩が行きたいところに付き合ってくれる先輩でした。

投手と野手は、一緒にいられる時間が想像以上に少ないもの。なかなか投手の気持ちをじかに聞ける機会がないので、WBCではいろんな話をさせてもらいました。タイガースに戻ってからも「もうちょっとマウンドに来てくれよ」とか、さりげなく投手の意見を野手に教えてくれたり…。そういう話ができる投手は決して多くはないので、本当にありがたい存在でした。

オリックスに移籍されてからも、兼任コーチという難しい立場にもかかわらず、若い選手の力を思う存分に引き出されていました。自分が頑張ることで若手に刺激を与えたり、親身になって話を聞いたり…。若い選手たちから慕われるのも当然ですよね。生き方、言葉、行動の積み重ねが、そのまま後輩たちの模範となっていたように感じます。

「こうしろ」と強制することなく人をサポートできる。どこにいても必ずみんながついて行く人柄。そんな先輩がユニホームを脱がれるのは寂しい限りです。また能見さんの経験が野球界に還元される日が来ることを願ってやみません。