今季限りで現役を退く西武内海哲也投手(40)が引退登板した。現役最後の勇姿。打者1人、楽天山崎剛に5球、丁寧に5球を投じた。二ゴロに仕留めた。

「ベンチに戻った時には、込み上げるものがありましたし、今はいつでも泣ける状態です。自分でグッと踏ん張っていないと、今にも泣いてしまいそうです」

慣れ親しんだ、まっさらなマウンド。グラブを取って、ボールを拭く。ロジンを付け、プレートを慣らす。「マウンドにあがったら走馬灯のようにいろいろよみがえってくるのかなと思ったのですが、そんなこともなく、ただただ緊張しました」。美しいワインドアップで投じた。

ストレート勝負だった。1球目は137キロボールとなった。「緊張のせいで思ったところに投げられず、四球だけは絶対嫌だと思っていたら、さらに緊張感が増してしまいました」。2球目は135キロストライク、3球目は138キロボール、4球目は137キロストライク。カウント2-2になった。5球目。勝負球は外角への139キロ。見事にセカンドゴロに仕留めた。「緊張と、この異様な雰囲気のなか、変化球がストライクゾーンに行く気がしなかったので、打たれてもいいから、変化球でボールになるよりは、直球で勝負したかった」。サインに首を振って、最後は直球での勝負に徹した。

1アウトを取って、役目を果たした。内野の仲間がマウンドに集まってきた。山川、外崎、源田、呉念庭と握手を交わした。そして2軍で経験を伝えてきた捕手の古賀、豊田投手コーチと抱き合った。

「豊田さんは(ハグに)驚いたかもしれませんね。ジャイアンツ時代から、すごくお世話になりましたし、豊田さんが1軍の投手コーチでいる間に、引退というのも縁を感じていました。ライオンズに来てから、野球以外の話もたくさんしましたし、感謝の気持ちを込めて、ハグさせていただきました」

ねぎらいと感謝の拍手を浴びながら、内海は帽子を取って、頭を下げた。ゆっくりとマウンドから歩を進めた。「マウンドに向かう時も降りるときも、記憶はあります。ラインを越えたあたりから、しっかり噛み締めました」。列をなす西武の仲間と1人1人、握手を交わし、ベンチに戻った。プロ19年、通算135勝の左腕。マウンドに別れを告げた。

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