阪神藤浪晋太郎投手(28)が今オフのメジャー挑戦を目指すことが27日、分かった。ポスティングシステムを使用しての大リーグ移籍を希望する。すでに球団には意思を伝えており、シーズン終了を待って交渉に入る。

 

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5年前の春、藤浪の口調は弾んでいた。

「本当に雰囲気がいいなと思いました。みんな純粋に『ボールパーク』を楽しんでいる感じで」

侍ジャパンの一員として17年WBCを戦い終え、米国から帰国した直後の言葉だ。

大会での登板はわずか1試合に終わったが、表情からは実に前向きな感情があふれ出ていた。

右腕はWBC期間中、当時アストロズに所属していた青木から「もっと野球を楽しんだら?」とアドバイスを受けている。

「自分もそうですけど、日本では8回2失点でも負けたら反省の弁を残してしまうもの。でもメジャーでは6回2失点で『グッジョブ!』、普通の外野フライを捕っただけでも『グッジョブ!』と仲間に迎え入れられるらしいんです」

日米カルチャーの違いに興味津々だった姿を、今も鮮明に記憶している。

大阪桐蔭で甲子園春夏連覇。阪神入団後も高卒1年目から3年連続2ケタ勝利をマーク。常に必勝を自らに課してきた男の目に、ベースボールをエンジョイしようとする姿勢はこの上なく新鮮に映ったのだろう。

あれから5年。絶不調時もメカニックや技術、トレーニングの試行錯誤を諦めず、想像を絶する苦悩の期間を乗り越えて今がある。結果を出せない時期も支えてくれた球団や仲間、声援を送り続けてくれた人々に恩義、感謝がないはずがない。もちろん、チームや甲子園への愛着は強い。それでも…。

向上心と好奇心に満ちあふれた性格。いずれ新たな舞台への挑戦心が芽生えるのはある意味、必然だったのかもしれない。【遊軍=佐井陽介】