阪神西純矢投手(21)が西武とのオープン戦で、異例の「9番DH」で出場し、投手強襲のチーム初安打を放った。

1打席限定のバント練習のはずが、走者がなく、持ち前の打力を披露する場になった。岡田彰布監督(65)も「打たせなしゃあないやん」と苦笑い。開幕ローテーション入りが内定している右腕は、決勝に進んだ侍ジャパンに刺激を受けつつ、メキシコ戦で3ランを被弾した同学年の佐々木にエールを送った。

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虎が誇る「二刀流」が異例の起用で、本領を発揮した。3回2死で西純がカウント2-0から松本の145キロ直球をはじき返し、投手強襲のチーム初安打。「いい感じに自分のカウントもつくれた。1打席しかないのは分かっていたので、どんどん振って合わせる感じで。ファーストストライクを打とうと思って打てた」。野手さながらの全力疾走で一塁を駆け抜けた。

球場への出発前に「9番DH」の起用が伝えられ、試合前練習では野手に交じってフリー打撃も行った。 岡田監督は「バントさそうと思ったんや。(走者が)出えへんかったんや(笑い)。ほな打たせなしゃあないやん」と苦笑した。西純は22日の巨人戦に先発するが、他の野手を指名打者で起用するため、打席には立たない。1日前倒しの1打席限定バント練習が狙いだったが、相手右腕の好投で思惑は外れた。昨季は打率2割3分1厘、1本塁打4打点を記録し、先発した13試合中8試合で8番に座った。期せずして、その打力を披露した。

この日、移動中のバスの中や試合前練習後にWBC準決勝をチェックし、刺激を受けた。同学年の佐々木は高校日本代表でも共闘し、親交のある間柄。4回に先制3ランを被弾し下を向いていたことが気になった。「投げていたボールもいいコース。打たれたのもしょうがない。下を向くような選手じゃないし、やっぱり僕らの同級生で一番。何年後かにアメリカに渡ってすごく活躍すると思うし、そういうピッチャーが下向いてるのは良くない。しっかり胸張って欲しい」と励ました。

西純は順当に行けば、開幕第6戦、4月6日の広島戦での先発が濃厚。“令和の怪物”に負けない活躍を投打で見せる。【波部俊之介】

◆投手の指名打者としての先発出場 日本ハム時代の二刀流大谷のほかにも、例がある。阪急(現オリックス)山沖之彦は82年8月12日近鉄戦に「5番・DH」で、偵察要員として先発。この年から「先発DHは1度は打撃を完了しなければならない」と野球規則が改正されていたが、上田利治監督がそれを忘れていた。山沖は1回表1死満塁の絶好機で見逃し三振。また同様のミスから、広島の今村猛が11年5月20日オリックス戦に「7番・DH」でスタメンに名を連ねた。今村は2回1死一塁で送りバントを決め、お役御免となった。いずれもベンチのミスによるもので、打席に入る前提での投手の先発DHは珍しい。

○…開幕1軍を狙う井上が2軍ソフトバンク戦でソロ本塁打を含む3安打と猛アピールした。左安、右安と広角に打ち分け、第3打席では左腕笠谷のスライダーを左翼へ運ぶ3号ソロ。打席数を確保するため2軍に合流し、4試合で打率3割8分9厘、3本塁打、4打点。「タイミング一番で、あとは自分のスイングをしようという形で」と好調をキープ。キャンプからの実戦では7本塁打目だ。

○…左肩違和感でファーム調整中の伊藤将が鳴尾浜のブルペンで立ち投げを17球行った。19日にブルペンでキャッチボールをした時よりも強めに投げた。岡田監督は「明日(22日)くらいにピッチングするかもわからんと言うとったよ。その様子を見てからやな」と、開幕2戦目の4月1日DeNA戦(京セラドーム大阪)に間に合うかどうかを慎重に判断していく。

○…開幕ローテーション入りが内定している大竹がウエスタンリーグのソフトバンク戦(鳴尾浜)に先発し、5回2失点(自責1)と安定の投球を見せた。外の緩い球を狙いに来た古巣の打者に対し、内外角に直球で攻めた。「後輩しかいなかったので、内角を投げやすかった」と、知った顔相手にシーズンの予行練習を行った。開幕2カード目の4月5日広島戦(マツダスタジアム)が濃厚。次回29日の2軍オリックス戦では、打席にも立ち、セ・リーグの流れも体感する。

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