子どもたち、野球って最高だろ! 阪神木浪聖也内野手(28)が、プロ初のサヨナラ打を放ち、連敗を2で止めるヒーローになった。同点に追いついた9回、なお無死満塁で中日守護神マルティネスから右前へ。0-6の劣勢をはね返して最後の最後に逆転し、今季3度目のサヨナラ勝ちと貯金3に貢献した。ゴールデンウイーク恒例の「こどもまつり」として開催された一戦で、不屈の男がネバーギブアップを体現した。

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木浪は一塁ベースを回ると、バンザイしてウオーターシャワーを浴びた。「サヨナラは初めてだったので、すごく水が冷たかったです」。それでも身に染みる。4万2579人の大観衆、ゴールデンウイークで子どもたちも大勢詰めかけた中で、プロ5年目で初のサヨナラ打。「去年ヒーローがなかったので、それが一番うれしかったですね、甲子園でできたっていうのが」と照れ笑いした。

「絶対に俺が決めるという強い気持ちがあった」。同点に追いついた9回無死満塁。覚悟は決まっていた。直前、梅野の打席では「いいところで俺にこい」とすら思っていた。中日守護神マルティネスの156キロを右前に運んだ。最大6点あったビハインドをひっくり返した。ネバーギブアップを体現し、4時間16分の熱戦に終止符を打った。

チームメート、スタッフの誰もが「ストイック」と口をそろえる。春季キャンプでは日の出前から「体を起こすために」と30分以上のウオーキングを欠かさない。体が起きると、ウエートルームにこもり、筋力強化に励んだ。関係者が「現役時代の鳥谷さんのよう」とレジェンドを重ねる28歳。人知れず汗を流してきた日々は、甲子園で輝くためにある。地元青森から両親が訪れた一戦でヒーローになり、最高の親孝行だ。

前日2日は母忍さんの誕生日。父弘二さんは「最高のプレゼントになったと思います」と笑った。お立ち台で「体調に気をつけて、これからも長生きしてください」と呼びかけてくれた息子には試合後、「ナイスバッティング」とLINEを送り「ありがとう」と返ってきた。今季4度目の猛打賞。打率3割4分9厘のハイアベレージで規定打席到達は目前。開幕遊撃は後輩の小幡に奪われたが、ここまでスタメン20試合ノーエラーだ。攻守で躍動すればするほど、両親の活力にもなる。

岡田監督も不動の遊撃としての評価を高めつつある。「見ての通りや。すぐに固め打ちするな、最初に1本打ったらなあ」とたたえた。連敗を2で止め、貯金3。負けていれば首位DeNAとの差は4に広がっていた。「明日も今日と変わらず守って打って、絶対勝ちます」。泥くさい男が、6点取られても諦めない虎の象徴だ。【中野椋】

 

▼阪神の6点差逆転勝ちは22年6月3日日本ハム戦(甲子園)での1-7→9-7以来。0-6からの逆転勝ちは、17年5月6日広島戦(甲子園)での0-9→12-9以来、6年ぶり。このときの9点差は球団史上最大差の逆転勝ちだった。

▼阪神の今季サヨナラ勝ちは3度目。4月1日DeNA戦(京セラドーム大阪)では近本が山崎から、4月18日広島戦(甲子園)では中野が栗林から。この日は木浪がマルティネスから。いずれも左打者が、相手の守護神からサヨナラ打を放っている。

▼阪神は中日マルティネス相手に初のサヨナラ勝ち。マルティネスには来日1年目の18年に先発登板した際に黒星をつけているが、救援登板で黒星をつけたのは2度目。前回は21年9月21日(バンテリンドーム)で同点の9回に木浪の勝ち越し犠飛で3-2で勝った。

▼阪神はサヨナラ勝ちで3連敗を阻止。今季の阪神は2連敗が最長。なお、阪神以外のセ・リーグ5球団は今季すでに3連敗を喫している。

 

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