支えてくれた妻にありがとう-。阪神石井大智投手(25)が、3年目でプロ初勝利を挙げた。2番手で登板した同点の8回を1安打無失点に抑え、直後にチームは勝ち越し。秋田高専、独立リーグの四国IL・高知を経て夢をつかんだ苦労人だ。NPB史上初となる「高専卒」の選手が、うれしい勝ち星をつかんだ。

高専は5年制。「野球で飯を食っていきたい、と考えるような子が来る学校じゃない」と教員は口をそろえる。秋田東中の同級生だった秋田商・成田翔が15年ドラフト3位でロッテに入団。これが転機となった。「翔ができるなら俺にも…」。5年生になる前の17年春、「野球で飯を食っていきたい」と覚悟を決めた。研究室にダンベルを持ち込み、警備員から「片付けなさい」と注意を受けたこともあった。

そんな、どこまでもストイックな男だ。昨年1月に結婚。年末、2泊3日で東京へプチ新婚旅行に出かけても、1日は都内のトレーニング施設巡りに時間を費やした。全てはプロ野球の世界で生き抜くため、だ。

「妻のおかげで野球に集中できている。『後悔しないようにやって』って毎回言われるので。僕以上に大変なことがあると思うけど、抑えること、勝つことが妻のためでもある。これからも妻のために頑張りたいと、本当に思っています」

結婚後、アスリートフードマイスターの資格を取得した妻の手料理で体を作る日々。この日は、ひとあし早く出勤する妻を最寄り駅まで車で送り届け、甲子園に向かった。「気をつけてね(妻)」「行ってらっしゃい(夫)」。愛する人との何げない会話が、腕を振るエネルギー源だ。

独立リーグ時代からの付き合いの愛妻は西宮市内の自宅で勝利を見届けた。「高知時代から1分1秒を無駄にしないように生きている人。それを続けてきた彼自身の努力が、勝利になって表れてくれてうれしいです」。石井が愛車を走らせて帰宅すると、記念球を待つ妻が待っていた。【中野椋】

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