“恐怖の8番”だ。阪神木浪聖也内野手(28)が値千金のマルチ安打で3連敗阻止に大貢献した。同点の8回に三塁強襲二塁打で好機を広げ、相手野選での決勝点を呼び込んだ。2回には連続無得点を22イニングで止める先制三塁打を放つなど、打率は驚異の3割7分。今季失策0で正遊撃に躍り出た5年目が覚醒の時を迎えている。首位DeNAが敗れ、2ゲーム差に再接近。12日からの首位攻防戦も背番号0にお任せだ。

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お立ち台に木浪の姿はなかった。だがこの男の大活躍なくして、3連敗阻止はなかった。ロッカー室へ続く通路で、打のヒーローは静かに喜びをかみしめた。

「真っすぐがきてもいける準備をしていた。でも二つ空振りしていますし、低めに来るだろうと、(バッテリーの)サインが決まって1歩前に行きました」

充実の表情で振り返った場面は同点の8回だ。1死一塁で打席が回った。3番手清水のフォークに2球続けて空振りし、その後粘って1-2からの5球目。セットポジションに入った直後、打席位置を1歩前に進め、読み通りにきた外角の落ち球を捉えた打球は三塁村上のグラブをはじいた。「抜けてくれ、でしたね」。左翼方向へ転がる二塁打で1死二、三塁と好機を広げ、糸原の遊ゴロ野選と小幡の好走塁がもたらした決勝点をお膳立てした。

23イニングぶりの得点も木浪のバットからだった。2戦連続完封負けの重苦しいムードを背番号0が振り払った。0-0の2回に1死から坂本が三塁打を放って打席が回ると、会心の一振りが右翼フェンスを直撃。20年9月以来、自身3年ぶりの三塁打で待望の1点を運んだ。「何としても先制点を取りたい気持ち。(坂本)誠志郎さんがいい形でチャンスメークしてくれた。思い切ってスイングすることができた」と珍しい連続三塁打に胸を張った。

4月8日ヤクルト戦以降「8番遊撃」で出場し続け、打率は3割7分まで上昇。規定に4打席足りていないものの、現時点で隠れ3位の好成績だ。7試合連続安打中の5月の打率は、24打数12安打で5割を誇る。岡田監督も「そら数字見たら打ってるやん。小学生でも分かる」と絶賛。「技術も良くなったんやろな、調子だけじゃ、そんな長いこと続けへんと思うよ。打ち方とか、タイミングの取り方とか、いろんな面でよおなったから、ずっと継続していい結果残してるんちゃう」と、褒めちぎった。

首位DeNAが敗れ、ゲーム差は2に縮まった。12日からは交流戦前最後の首位攻防3連戦。“恐怖の8番”の勢いは止まりそうもない。【波部俊之介】