阪神佐藤輝明内野手(24)が“神風”の援護を受けた3ランで2連勝を導いた。

3番小野寺が右翼線に落とす幸運の逆転三塁打で1点をリードした3回。なお2人の走者を置いて右翼ポール直撃の16号だ。打った瞬間、佐藤輝はファウルと思って歩き出したが、強い風でフェアゾーンに戻される1発になった。チームはこの回ラッキー2連発で一挙6点を挙げて逃げ切り。優勝マジックを17に減らし、カウントダウンを進める。

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打った本人も分かっていなかった。豪快にフォロースルーを決めた佐藤輝は一瞬、バットをつえのようにグラウンドについた。あぁファウルか…。1歩、2歩、歩みを進めたところで打球は右翼ポールの右側上部に直撃。えっ!? ここで本塁打と知ると、目を見開いた。バンザイする筒井一塁コーチのもとへ、控えめに両手を広げて走り出した。

「風じゃないっすか。分かんないっす(笑い)。ファウルかなと思ったけど、戻って。最後まで入ると思わなかった。結果、ホームランになってよかった」

近本の適時打で1点差に迫り、小野寺のラッキーな2点三塁打で逆転した3回、なお2死一、三塁の場面。左腕ピーターズの内角直球をすくい上げた。打った瞬間は右翼方向へ大ファウルの軌道。ところが、右翼から左翼方向へ吹く“神風”に押され、インフィールドに戻ってきた。岡田監督も「打った瞬間はな(ファウルかと思った)」と仰天するミラクル3ランで、この回一挙6得点。リードを4点に拡大した。

誰よりも近くで目撃したヤクルトの右翼手サンタナも驚きの証言をした。「ファウルゾーンから戻ってきた」。一塁手のオスナも同意した。「1度はファウルゾーンに行き、戻ってきた」。相手の度肝を抜く5試合22打席ぶりの1発は、チーム最多の16号3ラン。「66」の打点と合わせ、岡田阪神の打撃2冠を走る。8回には中前打で今季26度目のマルチ安打。今季、打率3割5分1厘を誇る好相性の神宮で9月も暴れた。

この日、母校近大が関西学生リーグの開幕戦で白星発進を決めた。今秋限りで退任する田中秀昌監督(66)の最後の秋になる。「勝つことで喜んでくれると思うので、頑張ります」。恩師なくして、夢のプロ入りは難しかった。フルスイングで結果を残し続けることが何よりの恩返しになる。

2位広島が勝利したが、自力で優勝マジックを「17」に減らした。9月連勝発進で2カードぶりの勝ち越し。「マジックは気にせず、目の前の試合に集中することを心がけていました。一戦必勝で頑張ります!」。スタンドから「アレ! アレ! タイガース!」の声が響く中、慢心なく前を向いた。【中野椋】

▽阪神筒井一塁コーチ(一佐藤輝の本塁打について)「風の影響はめっちゃ受けたと思いますよ、ファウルから(中に)入って来たから。ホームランはすごかったですね、初めて見ましたよ、あんなの。(同じ3回に右翼線に落とした)小野寺の打球は、こすってるから、普通右にスライスするんだけど、それがこっちにきましたもんね。ちょっと風が吹いてたんでね」

▽ヤクルト内山(捕手の位置から見た佐藤輝の本塁打について)「ファウルゾーンから戻ってきた。(強い回転がかかっていたのか?の問いに)分からないですけど、無回転だったのかもしれません」

○…「アイブラック兄弟」の今後は? 佐藤輝は前日1日、目の下の「アイブラック」を仕込んだ森下が2発を放つと「明日(2日)もやります」と笑顔で描き込みを約束。ただこの日、自身は本塁打を放ったが、弟分の森下は3打数無安打。ヒーローインタビューでは「アイツ、今日打てなかったんで、明日どうするか、このあと考えます」とコメントし、スタンドの笑いを誘った。3日の同戦も目の下に注目だ。

【動画】打った本人もビックリ 右翼ポール直撃、阪神佐藤輝明の豪快3ラン