3連覇の中心には、やはり大エース、山本由伸投手(25)がいた。この日はロッカールームで待機し、歓喜のマウンドへ。

「すごくうれしい気持ちが込み上げてきました。負ける試合ももちろんありますけど、いいところもたくさん出たと思う。またこの優勝を自分の成長につなげて頑張っていきたい」。リーグトップ14勝を積み重ね、前人未到の3年連続4冠にも手が届く無双ぶりだった。

左足をあまり上げない新フォームに挑戦した今季。変化を恐れず進化を求めた。模索の中で聞こえる周囲の声にも、ぶれなかった。それは5年前も同じ。17年のプロ1年目は2軍で2勝0敗、防御率0・27。順調に成績を残しながら、オフに大幅なフォーム変更に踏み切った。テイクバックを大きくした現在につながる姿。「変える必要あるの?」。チームの先輩を始め、春季キャンプでブルペンに入った瞬間から、否定的な声ばかりが聞こえた。

自分の感覚を貫いた。1軍の打者を全力で抑える中で感じていた限界。「とてもじゃないけど、これじゃ体がもたない」。将来のために、進化を求めた選択だった。「いつ完成するの? 完成するまで2軍にいたほうがいいんじゃない?」とコーチから言われても「いや、僕は1軍にいながらやり続けます」と言い切った。ブリッジや、やり投げのようなトレーニング。小さなバーを立てて行う踏み出しの練習。先駆者のいない道を歩いてきた。

信じられたのはぶれない目標があったから。まだ1軍に定着していない頃から口にしていたのは「メジャー」の夢。夢を追う姿が、歩みが間違っていないことを証明した。【磯綾乃】