オリックス紅林弘太郎内野手(22)の打棒が、暗雲を切り裂いた。同点の9回1死一塁。楽天西垣の高め151キロを狙い打ち、右中間を真っ二つに割った。一塁走者の杉本が激走で足からホームに滑り込んだ。今季初のサヨナラ勝利をもたらしたヒーローに、歓喜のウオーターシャワーが降り注ぐ。3年連続3度目のサヨナラ打。びしょぬれのまま上がったお立ち台で「めっちゃ気持ちいいです」と会心の笑みがはじけた。

苦境のチームを、開幕4カード目にして今季初の勝ち越し&最下位脱出へと導いた。個人としても状態が上がらず、前日10日までの打率は1割2分9厘。トンネルから抜け出せない中、経験豊富な先輩の西川や森に助言を求め、返ってきた言葉に救われた。「まだ全然焦る必要ないよ。まだまだここから」。紅林は「たくさん経験してきた人だからこそっていう言葉はある。気持ちが楽になりました」と殊勲打につなげた。

中嶋監督のゲキにも発奮した。結果が出ない中、指揮官から「また去年みたいに(2軍施設の)舞洲行くか?」とハッパをかけられていた。「監督は常に僕を奮い立たせるように声をかけてくださる」。これまでキックやヘッドロックで愛のムチを受けてきた指揮官に、試合後はハイタッチとグータッチを2度スルーされ「愛しか感じないです」とニッコリだ。指揮官は「もっといい感じで(シーズンに)入るかなと思ったら例年のごとく低空飛行で」と普段通り? 厳しく指摘しつつ「小言をめちゃくちゃ言いたくなるタイプですけど、今日はよくやりました」と〓(順の川が峡の旧字体のツクリ)を緩ませた。

5回にはファウルで粘って10球目で投手強襲の内野安打を記録。今季初のマルチ安打を放ち、復調の兆しを見せている。「サヨナラはすごく乗ってくると思う。ここから勝って優勝目指して、全員で頑張りたい」。ここからの巻き返し、背番号24の活躍は欠かせない。【古財稜明】

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