サムライの一刀だった。2回2死。阪神原口文仁内野手(32)は、広島の左腕森の動く138キロが甘く入るのを逃さなかった。タイミングを抜かれてもお構いなし。強く振り切った。打球は左翼線を鋭く転がり、二塁打となった。

「まずしっかり直球を、自分のタイミングで、いいポイントで打ち返すことが大事だと思っています」

もともとは読谷で中日2軍との練習試合に出場予定だった。同戦の中止が早々に決まると、宜野座の広島戦に舞台を変更。1打席目から結果を残すから、さすがだ。2打席目も右前にしぶとく落として2安打。実戦初打席だった8日の紅白戦でもいきなり左翼フェンス直撃の二塁打を放っており、貫禄の打席が続く。

試合前、ハリウッドスター渡辺謙と対面。「今日、試合に出ます!」「おう、頑張れよ!」。がんを克服したという共通点がある。大の虎党は不屈の男を特別視。今回の2打席に改めて感じ入った。

「紅白戦もそうだったけど、1打席への『かけ方』っていうかな。もう、1球で仕留めるみたいな。さすがやなと」。その姿はまさに侍ではないか? そう聞かれると、静かにうなずいた。「レギュラーにもその雰囲気を漂わせているヤツはいますよ。ただ、原口くんは、原口くんで自分の生きる道をしっかり感じている。病気した時に励ました時もあったのでね。すごい熱いんですけど、朗らか。リーダーとしてドンとベンチにいられるんじゃないか」。ホレ込んだ男への賛辞が止まらなかった。

藤川監督は「ああいう選手たちを見て、若い選手が『あ、違うんだ』と感じることができる期間。すごく意味がある」と手本にすべき存在だと称賛した。原口はこのオフ、FA宣言の末に残留を決断。そんな中でもほとんど強度を緩めず練習に没頭してきた。危機感が違う。監督交代は、自らの立場を揺るがすものと知っていた。

「この(早い)タイミングで試合に出るってことは、そういうこと。若い子がすごく必死になってきている。僕も負けないように、結果や内容を求めていきたい」

競争のど真ん中で、若手の挑戦を蹴散らしそうな迫力がある。【柏原誠】

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