<日本ハム2-8ロッテ>◇13日◇東京ドーム

 こんな18歳は、見たことない。ロッテの新人唐川侑己(ゆうき)投手が、初登板から3連勝を飾った。日本ハム戦で8回を投げ、4安打2失点9奪三振。パ・リーグの高卒新人がデビュー戦から3試合連続先発勝利は初めてだ。これまで24イニングを投げ、四球はわずか1しか与えていない。ゆったりしたフォームから、針の穴を通すコントロールが躍動を支えている。

 ダルビッシュのような150キロを超える直球はない。松坂のような高速スライダーもない。だが、唐川には抜群のコントロールがある。ダルビッシュも松坂も出来なかった高卒新人デビューから3連勝をやってのけた。

 立ち上がりから伸びのある直球でグイグイ押して、スライダー、チェンジアップを低めに集めた。日本ハム相手に4回までパーフェクト。わずか18歳の高卒ルーキーが余裕たっぷりのマウンドさばきを見せた。「ブルペンではしっくりこなかったけど、回を追うごとに修正してストライク先行で投げられたのが良かった」と冷静に振り返った。

 真骨頂は5回、陽へのカーブだった。この回先頭の稲葉にプロ初本塁打を浴びたが、すぐに気持ちを切り替えた。カウント2-3と粘られた後、カーブで空振り三振に仕留めた。走者を出したくない場面で、追い込まれても、動揺もせずに変化球を決め球に持ってこられるところに、新人離れした唐川の強みがある。バレンタイン監督は「どのカウントからでもすべての球種でストライクを取れるのが素晴らしい」と絶賛した。

 3連勝をスタンドで見守った母澄江さん(50)は「ふだんはマイペースでおっとりしているけど、野球になると負けず嫌い」と性格分析した。フィギュアスケートの浅田真央を尊敬して、高校時代は浅田の試合をよくテレビ観戦していたという。唐川は「浅田さんの精神力がすごい。野球は周りが助けてくれるけど、スケートは1人で戦っているから」と、年下ながら大いに見習っている。

 負けず嫌いな一面は7回に出た。稲葉への初球は、5回に本塁打を打たれたのと同じチェンジアップ。金沢捕手の直球のサインに首を振って自ら選択した。金沢は「一流打者に自分のチェンジアップが通用するか、もう1度試したかったんじゃないですか」と肝っ玉ルーキーの気持ちを代弁した。結果は右越え二塁打となったが、これも収穫ありの1球となった。

 一戦ごとに成長し、安定感を増している。次回登板は20日の交流戦初戦となる巨人戦が有力だ。「巨人はすごい選手ばかりですが1球1球気を抜かず、自分のピッチングをすれば何とかなると思う」とサラリ。78年三浦(阪急)以来となる4戦4勝のプロ野球記録も夢ではなさそうだ。【鳥谷越直子】