巨人渡辺恒雄球団会長(82)が10日、来年3月に行われる第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の監督について「ワンちゃんしかいない」とソフトバンク王貞治監督(68)を推す方針に急転換した。先月25日には「星野君以上の人物がいるとは思わない」と星野仙一氏(61)を推していたが、北京五輪での惨敗での反対の声を考慮してか、この日意見を翻した。王監督自身は固辞する姿勢を変えておらず事態は流動的だが、主催者サイドのトップ発言だけに影響はある。WBC監督問題は混迷の度を増してきた。

 「星野」から「王」へと急旋回した。都内ホテルで報道陣に対応した渡辺会長は、WBCの監督について王監督の就任を強く支持する考えを示した。「人間の中から選ぶなら星野君が一番いいんじゃないか。だがWBCとかオリンピックになったら神が必要なんだよ。神様は今やワンちゃん1人だ。だからもう、みんなで頭下げて、コミッショナー以下土下座しても、もうワンちゃんに頼むしかないね」。8月25日に「星野君以上の人物がいると思わない」と発言した同じ場所で、180度異なる意見を熱っぽく語った。

 かつての主張をあっさり曲げたのは、星野氏への逆風を強く意識したとみられる。「勝っても負けても監督の悪口を言うようなチームはいかんよ。今度、監督をみんなぼろくそに言ってるじゃないか。だから、勝っても負けても、その監督のために黙って行きますよという人じゃないと」などと現状の星野氏を意識する口ぶりで語った。また「WBCになるとメジャーからも日本人選手に来てもらわないといかん。そういうことができるのはワンちゃんしかいない」と求心力の面でもほかにいないとした。

 ただこの日の発言は暴走気味でもあった。王監督は体調面などを理由に固辞する姿勢を変えていないが「がんなんてのはおれだってやった。ワンちゃんのがんなんて大したことない。長嶋君がちょっと病気になってる。神様は今やワンちゃん1人だ」などと、お構いなしとばかりにまくし立てた。また「おれが出しゃばると星野君と同じようになる。おれが言うと君らが全部つぶすんだよ」とも語り、王監督と会うなど自身が介入する考えはないとした。

 あっさり変わる発言の重みや真意は定かでないが、日本でのWBC第1次ラウンドを主催する読売新聞社トップの発言だけに、各方面への影響は避けられない。「コミッショナー以下、土下座して頼め。日本のために。個人のためじゃないんだよ」という渡辺会長の声を、監督問題で中心的な役割を果たすNPBの加藤コミッショナーはどう受け止めるか。星野氏の「固辞」に続く渡辺発言で、再び事態は動きだした。【大塚仁】