阪神矢野燿大(あきひろ)捕手(41)が9日の日本ハム戦(京セラドーム大阪)で今季初の実戦出場を果たす。8日までにプランが決まった。9日はスタメンDHで、11日のオリックス戦(京セラドーム大阪)では初のスタメンマスクをかぶる予定だ。城島健司捕手(33=マリナーズ)の加入により厳しい立場に追い込まれたが、持てる力を振り絞って存在感をアピールする意気込み。プロ20年の経験や知恵を結集して意地を見せる。

 矢野のプロ20年目のシーズンが9日、いよいよ幕を開ける。阪神の地元関西で2010年初試合となる京セラドーム大阪の日本ハム戦。真弓監督が「出番はまずは打つ方から」と話していた通り、スタメンDHで今季初実戦に臨むことが分かった。

 自主トレ、キャンプと順調に体を仕上げてきた。痛みを抱える右ひじの状態は良好で、昨年10月に骨折した右足首も問題ない。キャンプ打ち上げ後は、1軍本隊と離れて甲子園室内で打ち込み。「ひじも痛まないし、バッティングにも全然影響はない。順調にここまでこれた」。魔の骨折以来、5カ月ぶりの実戦へGOサインが出された。

 だが笑顔はない。オープン戦を自らの生き残りアピールの場と位置づけているからだ。「城島が入った今年は今までとは立場が違う」。98年の阪神移籍後、10年以上守った正妻の座を明け渡すことになった。さらに昨年自身が故障した間、メキメキ力をつけた狩野もいる。打力を買う真弓監督は、右の代打の神様や交流戦でのDHプランを描く。だが矢野自身は、オープン戦で結果を残してこそ任される役割と認識している。

 11日のオリックス戦では、いよいよ初の先発マスクも被る。二塁へのスローイングをはじめ、捕手として本当に復活した姿を敵だけでなく、味方首脳陣にも見せる必要がある。

 「代打なら代打で頑張らないといけない。でも第1は捕手として出るためにやってるわけだから。今はとにかく試合に出れるようにアピールするしかない」

 開幕が近づくにつれ、城島がマスクをかぶる機会が増える。残されたチャンスは少ない。これまで公式戦への調整場だったオープン戦が、一投一打席もムダにできない真剣勝負となる。

 家族のため、ファンのため、全力で力を振り絞る。昨年終了後から試練の連続だった矢野は、大阪や神戸、西宮の街で声を掛けられる回数がグンと増えたという。

 「いい時応援してくれるのもうれしいけど、悪い時に応援してくれる声は心に染みてありがたい。みんなを喜ばせたいし絶対裏切ったらアカンと思ってる」

 京セラドーム大阪に響くのは、一際大きく温かい矢野コールか。自ら「修行の年」と位置づける2010年。金本らと並ぶチーム最年長41歳が、プロ20年のすべてを結集して男の意地を見せる。

 [2010年3月9日10時43分

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