<広島6-7ソフトバンク>◇14日◇マツダスタジアム

 ああ、デビュー戦で無念の2軍落ち…。広島のドラフト1位ルーキー今村猛投手(18=清峰)が、オープン戦のソフトバンク戦でプロ入り初の実戦登板を果たした。6回にマウンドへ上がり、先頭の長谷川に左翼席へ被弾して1回1失点。「あまり覚えてません…」と話すなど、ドキドキの初陣だった。試合後には2軍行きが決定した。ほろ苦い被弾をバネに、ファームでプロで戦うための心技体を整える。

 初体験の18球を投げ終えて、今村はしばらく放心状態に陥った。登板直後の一塁側ベンチ。所在がなく立っているとバッテリーを組んだ倉に呼ばれた。「どうやった?」。先輩の問い掛けには、苦笑いで「全然、覚えていません…」と話すのが精いっぱいだった。

 強心臓で鳴らした昨年のセンバツV腕も、プロのムードに慣れるのに必死だった。日曜日の本拠地マツダスタジアム。曇り空でナイター照明が付き始めたばかりの6回が出番だった。いきなり、昨季159安打をマークした長谷川と対戦。フルカウントからファウルで粘られ、力いっぱい投げた10球目の速球が外角高めへ。ジャストミートされ、無情にもライナーで左翼席に運ばれた。

 今村

 プロのレベルが分かりました。緊張しましたね。高い球は打たれるというのを今回、学びました。低めに集めて、自分の持てる力をしっかり出したい。(実力は)全部は出せていない。今日は球場の雰囲気をつかめたので良かった。

 1発を浴びた直後の松田は速球で二ゴロに打ち取ったが、田上には左中間へ二塁打。だが、この危機は本多をスライダーもまじえて左飛、川崎にはツーシームで投ゴロに抑えた。デビュー戦は全球種を駆使して何とか1回1失点。野村監督が「まだまだこれから上がってくると思うし、いい経験になった」と話せば、大野ヘッド兼投手コーチは「打たれたこと、抑えたことが1つの経験になる」と、2軍での出直しを通告。今村はこの日のうちに2軍寮へ引っ越した。

 高卒新人は春季キャンプから1軍に帯同。右肩の張りで別メニュー調整したこともあったが何とか実戦にこぎつけた。この日の直球の最速は143キロ。現時点で本調子とは程遠い。今村は言う。「慣れながら、相手打者としっかり勝負する。強い気持ちを持ちたい」。厳しい勝負の世界でほろ苦い経験を味わった。ここからはい上がる-。大物ルーキーは新たな覚悟を固めた。【酒井俊作】

 [2010年3月15日11時45分

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