<阪神9-2ソフトバンク>◇6日◇甲子園

 最強助っ人の打棒が頼もしい。阪神マット・マートン外野手(28)が、3打席連続タイムリーでソフトバンクを粉砕だ。初回に内野安打でチャンスメークすると、5回に勝ち越し打を放ち、6、8回にも適時打。4安打3打点で、セ・リーグトップのマルチ安打も24試合に更新した。マートンが3番に入る打線は、6回に4安打を連ねるなど、連打、連打で15安打9点。もう、目を離すヒマはありまへんで。

 振れば安打のマートン小槌(こづち)だ。マートンは両ほおに塗った黒いペイントをぬぐいながら、白い歯を見せて言った。「今日はとてもいい日でラッキーな日だ。5打席の内容がよくてもヒットが1本という時もある。とにかく守備のいない場所にボールがいけばいいんだよ」と笑った。

 つなぐ3番が本領を発揮した。初回1死一塁では中前打でチャンスを広げて、新井の先制打をアシスト。同点の5回無死一、二塁では中前に勝ち越し打を放った。6回にも中前適時打、最後は8回に右中間突破の適時二塁打。圧巻の4安打3打点で、四球を加えて5打席全出塁。「打てる秘密なんてない。質のいい打撃を考えているだけ」というが、5月5日中日戦以来3度目の4安打。リーグトップのマルチ安打試合も「24」に伸ばした。これでリーグ最多の82安打を誇る中日森野まであと2本。54試合で80安打は年間約225安打という驚異のペースだ。

 チームにもすっかりとけ込んでいる。札幌、仙台の遠征から戻った3日。妻ステファニーさん(26)のバリカンで自慢のレッドヘアを短くそろえてもらった。翌日の甲子園では燃えるような短髪を城島にいじられて突っ込まれたが「ちょっとずつ短くして彼の髪形に近づけているんだ」とジョークを飛ばした。1年目の日本はこれから暑い夏が到来するが「僕はフロリダ生まれだからね、暑いのは問題ないさ」とさらり。初めての環境をエンジョイする心の余裕が活躍を生む。

 マートンが5月24日に3番に入ってから、チーム打率は4分2厘も上がり3割8分3厘。何より「つながり」が出てきたことが大きい。この日も初回に3連打で1点、5回にも3連打で1点。5点を奪った6回にも4安打が連なり、8回のダメ押し打も平野、マートンの連打のよるもの。4日のオリックス戦でも6回に3連打するなど、一発だけい頼らない攻撃パターンができつつある。

 7日は左腕杉内が先発予定。真弓監督は「どこのエースでもうまく攻略している。何とか攻略したい」と話した。キーマンは対左投手の打率4割3分8厘を誇るマートンだ。お立ち台で「日本のどの球場よりも甲子園でプレーすることが好き」と笑った男が、ルーティンワークのようにヒットを打つ。【益田一弘】

 [2010年6月7日11時0分

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