<広島5-4阪神>◇3日◇マツダスタジアム

 ベテランがいぶし銀の活躍を見せた。広島石井琢朗内野手(40)が、2点を追う6回2死満塁で、粘ってレフト前へ同点2点タイムリーヒット。嫌な流れを断ち切る一打で打線の奮起をうながし、7回広瀬の逆転決勝2点打を呼び込んだ。1歳年上で、打者と捕手として長年対戦してきた阪神矢野燿大捕手(41)が引退を表明したこの日、石井がベテラン健在を見せつけた。

 目の前で代打・前田智が敬遠された。2点を追う6回2死満塁。打席に入る石井は「前田くんの後は打ちづらいですよ(笑い)。あれだけの大声援で盛り上がった後ですからね。前田で勝負してくれって願ってました」と話したが、ベテランは落ち着いていた。そして燃えていた。

 阪神久保に対してカウント2-3。追い込まれても必死でボールに食らいつく。ファウルで3球粘った9球目、外角のストレートをレフト前へきれいに打ち返し、走者2人をホームに迎え入れた。同点の2点タイムリー。石井は「前田くんが打たせてくれたんです。結果的に粘っただけですよ。この大声援をため息に変えるわけにはいきませんから」とにこやかに振り返った。

 野村監督も「相手も必死で来るところで、甘い球をしっかり打った。ああいうところで打てばベンチも盛り上がるし、ムードが良くなる」とベテランの働きをたたえた。

 この日、1歳年上の阪神矢野が現役引退を表明した。矢野が中日時代から、石井は打者と相手捕手として何度となく“対戦”を繰り返してきた。打席に入るときにあいさつすると、必ず笑顔で応えてくれた。「投手のいいところを引き出そうとする“ええ女房”という印象でした」と捕手・矢野について語る。石井が横浜時代の06年には、自分のハーフスイングがボールと判定されたことに激怒した矢野が、退場を宣告されたこともあった。

 石井も、8月25日に40歳になった。チーム一のベテランだが、この夏場でも球場入りは早く、みっちりとトレーニングをこなす。バリバリのレギュラーだったころは、1試合の中で場合によっては捨てる打席もつくった。だが、代打ではできない。球筋やスピードを体感できない難しさもある。それでもチームに貢献するため、石井は今日も必死にバットを振る。【高垣誠】

 [2010年9月4日11時19分

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