ヤワラ魂で、今季もフル回転だ!

 ソフトバンク甲藤啓介投手(27)が、柔道トレで昨季以上の活躍を狙う。昨年の大ブレークを支えていたという福岡大女子柔道部での極秘練習を本紙に公開。現役時代の谷(旧姓田村)亮子氏の精神的支柱にもなっていた同大の中橋監督の指導を受け、右腕がタカでも金!

 を目指す。

 早朝の道場に、飛躍の秘密が隠されていた。まだ外は真っ暗な午前6時過ぎ。福岡大女子柔道部の道場で、甲藤がうめき声をあげた。昨季チーム2位の65試合に登板し無敗と大ブレーク。今季のさらなる活躍が期待される右腕は、女子選手とともに歯を食いしばりながらハードな朝稽古に汗を流した。

 甲藤

 めっちゃきついですよ。でも女の子ができていて(自分が)できないから悔しくてやる。去年あそこまで投げられたのはここに来たおかげですよ。

 近大から入団して4年間、まったく結果を残せなかった。背水の覚悟で、09年のオフに知人の紹介で門をたたいた。女子選手と同じ徹底的な体幹強化や、ハードなトレーニング。138試合でブルペン投球を行った昨季のフル回転の礎となった。今オフも午前7時前からの朝稽古をこなし、西戸崎室内練習場で自主トレを行ってきた。

 甲藤

 ここで練習したおかげだと思っているから。今年は一番練習している自信はありますよ。先生のおかげです。

 練習量にも自信が持てるようになるほど、引っ込み思案だった右腕は体だけでなく精神的にタフになった。それを支えたのは、右腕が心酔する先生。96年の全日本選抜女子61キロ以下級で優勝経験を持つ、同大女子柔道部の中橋監督だ。02年に65連勝がストップした田村亮子が、再出発を決意した際にアテネ五輪までの練習パートナーに選んだ相手。五輪金メダリストの精神的な支えとなっていた柔道家が、結果を残せていなかった右腕の心を変えた。

 中橋監督

 (甲藤は)精神的にも去年より全然変わりましたね。

 同監督の教えは、普段から徹底的なプラス思考を植え付けること。「人に『赤を思うな』と言ったらその人脳には赤がイメージされる。『四球を出すな』と言った時点で四球がイメージされちゃうと思うんです」。

 「打たれれば2軍」というマイナス思考になりがちな立場だった敗戦処理右腕はいつのまにか勝利の方程式入りを果たしていた。

 甲藤

 今季は70試合でも80試合でも、言われたところで全力で投げますよ。その準備はできてますから。

 フル回転を宣言できるのも、強靱(きょうじん)な肉体と精神力を手に入れたからこそ。甲藤がマウンド上で「一本!」を取りまくる。【倉成孝史】

 [2011年1月29日11時34分

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