中日の新外国人ジョエル・グスマン外野手(26=オリオールズ2A)が来日1号を放った。22日、韓国ハンファとの練習試合(北谷)で、軽く当てただけの打球が右翼スタンドに飛び込んだ。実戦で無安打だった大砲が、ついに評判通りのパワーを披露。09年の2冠王ブランコとのポジション争いが本格化してきた。

 両軍ベンチも、スタンドもどよめいた。5回1死二塁、1ボール2ストライクと追い込まれたグスマンは外角のカーブに軽くバットを出したが、右翼へフラフラと上がった打球がぐんぐん伸びる。最初はゆっくり追っていた相手右翼手が慌てて背走し、フェンス際でジャンプするも届かない。打球は手すりの上部に当たってスタンド・イン。平凡なフライと思われた打球が、本塁打となった。

 「三振したくなかったから、とにかく当てようと思って軽く振った。完璧な当たりではないけど、当てさえすれば力があるから飛んでいくと思っていた」。

 実戦3試合、12打席目での初ヒットが驚きの本塁打になった。周囲はあっけにとられたが、当の本人は、さも当然と言わんばかりに笑みを見せた。勢いのある直球をミートしたならば、ともかく、緩い変化球を「当てただけ」の打球がスタンドに入ってしまう。ナゴヤドーム天井弾など驚異的な飛距離を誇るブランコを上回るというパワーは、本物だった。いつも行動をともにする桂川通訳も「あれが入るとは思いませんでした」という驚弾だった。

 パワーだけではない。三塁に走者を置いた場面では2度とも、犠飛を放った。走者が一塁にいる場面では右前打でチャンスを広げた

 「いつも本塁打を狙っているわけではないよ。チームの優勝に貢献するためには打点を挙げることが大切だからね」。

 内容の濃い3打数2安打4打点。4番・指名打者で、打線につながりを生んだ。

 現在は一塁グスマン、右翼ブランコと同じ長距離砲の2人が共存しているように見えるが、ブランコの外野守備が劇的に上達しない限り、一塁のポジションを奪い合う可能性が高い。開幕までの1試合、1試合がライバルとの勝負になる。この日はブランコが不出場のため、半歩リードした形だ。

 「3週間、一生懸命練習してきた結果が出てうれしい。これからもベストを尽くすだけだ」。

 厳しい練習を乗り越え、本格的な開幕スタメン争いへ。グスマンは表情を引き締めた。【鈴木忠平】

 [2011年2月23日12時40分

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