<ロッテ3-6楽天>◇4日◇QVCマリン

 ザックだ、なでしこだ、いや、小山だ!

 サッカー一色のスポーツ界に「楽天のパウル君」こと小山伸一郎投手(33)がちょっと待ったコールだ。ロッテ戦の3番手で登板。1点リードの6回から2イニングを6人で終え、シーズン自己ベストとなる6勝目を挙げた。球界随一のサッカー通で、欠かさず行う代表戦予想の的中率は抜群。本業も10戦連続無失点と申し分ない安定で、借金を1まで減らしたチームの原動力となっている。

 サムライブルー…ではなくクリムゾンレッドのユニホームで、この夜も小山は仁王立ちだった。1点差に追い上げられた6回に堂々の途中出場。高速シンカーと常時145キロを超す直球。パワープレーでロッテ打線を押し込んだ。2イニングを6人で終え、ボランチよろしく試合中盤の安定をもたらした。自身キャリアハイとなる6勝目をゲット。「試合の流れが悪い中で、相手の大谷君もいいピッチングをしていた。誰かが悪くても周りが助けてくれる。僕もそうだった。序盤に調子がでない時期、片山が助けてくれた」。細い目をさらに細くし、ミックスゾーンを通過した。

 サッカー代表戦は欠かさずチェックし、大きな試合の前は予想を立てる。インターネットの世界では、野球好きから「何やってんだ」「本業をしっかり…」とおしかりを受けることもある。だが小山は「そんなこと全く気にしませんよ。どうぞ」と意に介さない。

 小山

 結果を出せなかったら非難される。これは当たり前ですね。プロですから。だからあえて言う、っていう部分はありますよね。結局、僕自身の責任になりますからね。

 幾多の修羅場をくぐってきた一流のメンタル術。だてに「楽天のパウル君」を襲名している訳ではない。この太さが15年目、中継ぎ専門職の真骨頂だ。

 星野監督はそんな小山を極めて高く評価している。「サバンナにいるハイエナ、ハゲタカのように、勝ちをさらうヤツがチームにいると強いんだ。絶対必要なんだ」。たくましい容姿はハイエナならぬ百獣の王ライオンか。オール中継ぎで狩りまくった6勝は勲章だが、こんなところで満足するほど遠慮深い男じゃない。「いい場面で使ってもらってる。あと4勝ですね」。2けた10勝にロックオンだ。【宮下敬至】