西武中島裕之内野手(29)が今オフのポスティングシステム(入札制度)を行使してメジャー移籍する可能性が高いことが5日、明らかになった。昨オフも米挑戦を希望しながら、球団が認めず断念。今年は、昨年の経緯や貢献度を考え、球団は前向きに話し合うとみられる。容認の場合は、ジャイアンツ、ダイヤモンドバックス、オリオールズ、ドジャースなどが獲得に名乗りを上げるとみられる。チームはこの日、クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージでソフトバンクに敗退。近日中にも交渉が始まる。

 中島は昨年オフに認められなかった米球界移籍を、今年も訴える。松坂など特例はあるが、原則としてポスティング移籍を認めていない球団が、容認するかどうかが最大の焦点となる。球団関係者の話を総合すると「本人の強い意志があれば、考えないといけない。去年のこともあるので、納得いくまで交渉する」と態度を軟化させているという。

 メジャー挑戦となれば、少なくとも4球団程度が興味を示しているとみられる。近年日本人内野手への評価は厳しくなっているが、日本で安定した成績を残し、今季も全144試合に出場した体の強さは魅力的。6年連続打率3割こそ逃したが、初3ケタとなる100打点をマークした勝負強さを見せた。内野レギュラーが手薄なジャイアンツ、ダイヤモンドバックス、オリオールズ、ドジャースなどが獲得に向けて本格調査している。

 昨年は希望を伝え、球団幹部から移籍容認とも取れる発言があったものの、結局は認められなかった。その後の契約更改で、中島は「シーズンが終わったら、真剣に検討するという話をしてもらった」と今オフに交渉のテーブルにつく確約を得ていた。長く交渉の窓口となっていた前田球団本部長が今季限りで退任。新任の鈴木編成部長は柔軟に対応する姿勢を示している。編成トップの交代で、球団方針も軟化する可能性がある。

 この日、ソフトバンクに敗れて全日程を終了。今後について「今は話すようなことは何もない。どうなるか分からない」と、試合直後とあって気持ちの整理がつかなかった。だが、近日中にポスティング移籍容認を求めて球団と交渉に臨む。順当なら来季中に海外FA権を取得する見込み。FA移籍の場合は球団に見返りがなく、ポスティングによる入札金で少しでも球団に恩返ししたい思いもある。

 V奪回を狙うチームにとって、不可欠な戦力であることに変わりはない。今季は球宴明けから主将に任命されると、最下位に低迷していたチームの先頭に立ち、大逆転でのCS出場に導いた。人気、集客面でも貢献度は絶大。長年の功労者だけに、球団が本人の強い意志を尊重する可能性は十分ある。夢の実現へ、条件は整いつつある。

 ◆中島裕之(なかじま・ひろゆき)1982年(昭57)7月31日、兵庫県生まれ。伊丹北から00年ドラフト5位で西武入団。高校時代は主に投手。プロ入りと同時に内野手に転向し、04年からレギュラー。球宴出場7度。08、09年ベストナイン、最高出塁率。08年ゴールデングラブ賞。09年最多安打。08年北京五輪、09年WBC日本代表。180センチ、90キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸2億8000万円。独身。