<楽天5-0日本ハム>◇15日◇Kスタ宮城

 首位も見えてきた。楽天が投打にわたる“星野チルドレン”の活躍で、2位日本ハムに快勝。カード勝ち越しを決め、再び0・5ゲーム差に迫った。交流戦明けは12勝6敗1分けの強さで、球団創設8年目で初めて勝率5割以上での前半戦折り返しを確定させた。首位ロッテにも2・5ゲーム差。今日16日からは、そのロッテと前半戦最後の3連戦。3連勝なら日本ハムの結果次第で、星野楽天としては初めて首位に立つ可能性もある。

 インタビュアーの声も弾んだ。勝率5割以上での折り返しが決まり、「球団初です!」と興奮気味の質問。だが、星野仙一監督(65)は渋く返す。「5割は常に我々、勝負の世界にいる男にはモチベーションになる」と硬派に答えた。ところが、すぐに「みんなの家庭と一緒だよ。貯金があると、みんなニコニコでしょ」と目尻を下げニッコリ。3つ目の貯金を手に、笑いを誘った。

 手塩にかけたチルドレンが活躍した。「若いのが育ってきた」。まずは「投」、この日の先発辛島だ。左手中指痛が癒え、約2カ月ぶりの1軍を感じさせない。変化球を低めに集め、7回3安打無失点。「2軍で走った時間がプラスになりました」と自力で3勝目をものにした。

 その辛島は「ファームで一緒にやっていた銀次さん、枡田さんの調子が良くて刺激になります」と明かした。この2人が「打」のチルドレン筆頭格だ。1-0の6回、先頭銀次が中前打。立ち直っていた日本ハム・ウルフ攻略の先陣を切ると、1死二塁で今カードから4番に座る枡田が2点目の中前打。後の打者も続き、一挙4得点で試合を決めた。

 辛島、銀次、枡田。就任1年目の昨季、誰も監督の描く構想の中心にはいなかった。辛島の転機は今春。星野監督は「先発で大きく育てたい」と中継ぎで伸び悩んでいた左腕に道を与えた。銀次、枡田は大久保打撃コーチの下、昨秋から徹底的に振り込ませた。3人の抜てきに共通する原理は、実はシンプル。「競争」だ。

 星野監督

 球団の歴史を調べて分かった。ポジションを与えられてきた選手が多い。下に落ちても、すぐ同じ人が上がる。選手がいないからしょうがないという「甘えの構造」だった。競争が少なかった。銀次や枡田は自分で今の立場をつかんだんだ。2度と放すものかと思っているだろう。

 選手層の薄さが新興球団の泣きどころ。育てるしかない。銀次、枡田は守備に目をつむって使い続けた。多少のひいきは、あくまで打撃で結果を出したから。反対に、二塁内村は球団を出た。遊撃阿部は2軍に落ちた。辛島もキャンプ中の2月後半、いったん2軍に落ちた。「使ってもらっている立場。毎日必死です」とは銀次。ダメなら落ちると自覚している。

 今日から2・5ゲーム差で追う首位ロッテと3連戦。1位もうかがえる位置に、星野監督は「もちろん、勝ち越し!」と威勢よく締めた。交流戦明けだけでも、2軍で好調の河田が5年ぶりに昇格。フロントはハーパーを獲得し外国人の競争をあおる。新チルドレン誕生の予感も十分。今の楽天には、混パを抜け出す勢いがある。【古川真弥】